2年前に男の子を出産した、作家の柚木麻子さん。子どもを保育園に預けながら書き上げた、出産後初となる長編小説『マジカルグランマ』(朝日新聞出版)は、第161回直木賞の候補にノミネートされました。母になり、作家としてもさぞ充実した日々を送っている、と思いきや……? この連載では、柚木さんの仕事と子育ての両立、初めての育児で戸惑ったこと、社会に対する思いなどを、ありのままに語っていただきます。

仕事も子どものごはんも、全部を完璧にやらなくていい

 初めまして。作家の柚木麻子です。2年前に子どもを出産し、保育園に預けながら、小説を書いてます。そう言うと、さも無駄なくテキパキしてるって思われるかもしれないんですが、全然違うんです。

 今の世の中、「子どもは産んでね、産んだらいいお母さんになってね、でも仕事はちゃんと続けてね」という「圧」がかかっていますよね。で、その「圧」としなやかにつきあいながら、小粋な感じで育児と仕事を両立させるお母さんが、メディアで取り上げられたりしているものだから、私、勘違いしちゃったんですよ。大変かもしれないけれど、私にも案外できるのかな、と。

 でも、無理だった。私、育児をなめてました、すみません。産んでみなきゃわからなかったんだから、しょうがないじゃん、と自分を慰めても始まりません。目の前に子どもはいるし、原稿の締め切りは迫り来るし、生活は回していかなくてはならないし。あああああ~。もうね、両立なんかゼーンゼンうまくできていないです。今日も絶賛、破綻中。

 何が起こっているかと言いますと、原稿は遅れる、仕事のクオリティーは下がる、子どものごはんのクオリティーも下がる、子どもを寝かしつける時間が遅くなる、私が夫にキレる、「おまえがやれよ」と言い合って離婚騒ぎに発展、母に頼りすぎ体調を崩させてしまう……。TM NETWORKの『Get Wild』って曲、ご存じですか? あの曲が毎日、頭の中を流れてる感じ。燃える車に乗って走っているような、かなりスリリングな日々を送ってます。

子どもを保育園に預けて執筆活動を行う柚木麻子さん
子どもを保育園に預けて執筆活動を行う柚木麻子さん

次ページから読める内容

  • 最初の年は保育園に40カ所落ちた
  • 取材に出られず、主人公も家から出ない設定に
  • 産んだ瞬間、輝くママに変身できるわけじゃない

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