出産から2年間の仕事について「自分の価値を低く見積もっていた」と振り返る柚木麻子さん。セルフディスカウント(自分の価値を低く見積もる)することが「たしなみ」のように広がっていく現状はおかしい、と疑問を呈します。一方で、家事育児には完璧を追い求めず、あえてダメ母を貫くことも決めたそう。理想の母親像、仕事像について改めて語っていただきます。

息子の得意な遊びはままごと

 みなさん、こんにちは。息子がそこらじゅう走り回るようになってから5キロ痩せた柚木麻子です。以前から、小さいお子さん連れたお母さんってスタイルいい人が多いなあ、と思っていたんですけど、ようやく分かりました。あれは、痩せているんじゃなくて、ヘトヘトになってやつれているんですね。

 そんな息子ですが、優しい子に育っています。保育園で自分の2倍ぐらいの体格の女の子たちのご機嫌を取っている様子とか、男の子にハグしちゃって相手からぎょっとされているところとかを見るにつけても、おお、よしよし、と思う。

 息子の得意な遊びは「ままごと」です。実は、わが家には昔のアメリカ映画によく出てくる「アメリカンダイナー」を模した巨大なままごとセットがありまして。ハリウッド映画に出てくるアメリカンダイナーがすごくかっこよくて、子どもができたらわが家にこれをつくることが私の夢だったんです。

 そしたら、夫がアリゾナのメーカーに注文して取り寄せ、徹夜で組み立ててくれたんですよ。思えば、これが夫のこの2年間で一番のGood Job。もう2年間の恨みつらみが一気に氷解しましたからね、うれしさのあまり。

 息子は家に友達が遊びにくると、エプロンをしてダイナーの店主になりきり、コーヒーをいれ、パンケーキを焼いてふるまいます。これならきっと保育園でも、泣いているお友達をままごとコーナーへ連れて行き、ちゃちゃっと簡単なものを作って、「ほら、これ食べなよ」なんてことができるはず。

 やっぱり食べることは基本ですから、息子には「食」に興味のある人になってほしいです。グルメとかじゃなくて、毎日のご飯とおみそ汁をきちんと作れる人に。できれば農作業にも親しんでほしいな。どろんこになって田植えや稲刈りをすれば、それが食への興味にもつながるでしょう。まだ先ですが、そんな体験を積ませてくれる学校に行かせたいです。

 もうひとつ息子に望むのは、「踊れる人」になること。

 りゅうちぇるさんや藤井隆さんなど、私が「この人いいな、女性を対等な存在としてとらえているな」と思う人はたいてい踊れます。その場を盛り上げてみんなで楽しむことができる。ですから、踊れるヤツはいいヤツなのです。あ、ちなみに、うちの夫は踊れません(笑)。