子育てをしながら管理職に挑戦…。そんな「ママ管理職」は、もう特別な存在ではありません。リモートワークなどの新しい働き方も追い風となる中、どんな思いで働き、キャリアを描いているのでしょうか。仕事のやりがいや葛藤、子育てとの両立方法などについてのインタビューを通して、毎日バタバタ、悩みながら一歩一歩進むママ管理職のリアルな姿を紹介します。

今回は、アドビ日本法人のマーケティング本部で Adobe Express & エデュケーション本部長を務める小池晴子さんのストーリーを前・後編でお届けします。後編では、転職先の米国のEdTechベンチャー企業での経験が、どのように今の本部長としてのマネジメントのあり方につながっているのかについて聞きました。

ここでずっと働くべきか迷い始めた

 43歳だった2016年に、20年以上にわたって編集業務や商品開発に携わってきたベネッセコーポレーションを退職し、AIを使い学習者の理解度に合わせてカスタマイズした学習体験を実現するテクノロジーを提供する米国のEdTechベンチャー企業に転職した小池晴子さん。「ベネッセでの仕事は充実していたけれど、会社員生活の折り返し地点である40代に入ってから、残りの20年をどのように過ごしたいかを考えたときに、ここでずっと働くべきか迷い始めた」と振り返ります。

 その理由とは、年を重ねるごとに、デジタルの商品サービスに挑戦してみたいという気持ち、大学時代に専攻していた英語を仕事で生かしたいという気持ちがだんだん強くなっていたことでした。ベネッセの中でもデジタル関連の仕事や海外との関わりを持てる仕事もあったため、社内で新しい仕事の機会を探しつつ、少し外にも目を向けるようになったと言います。

 そんなある朝、当時から登録していた米ビジネスSNSのリンクトイン経由でニューヨークから電話がかかってきたのだそう。米国の教育系スタートアップ企業から、日本オフィス立ち上げにあたって力を貸してほしいと声がかかったと言います。実は、そのとき初めて、外部からは自分が教育専門の人材として捉えられていることに気づいたのだとか。デジタルと英語の仕事に携われるチャンスだと思った小池さんは、転職する決心を固めます。同じ教育業界とはいえども、新しい環境に飛び込むことに不安を感じなかったのでしょうか。

 「最後の決め手が何だったかは定かではないのですが、機が熟した感覚はありました。当時、残りの会社員生活をそのままベネッセで過ごすとしても、楽しいことはいろいろあるんだろうなという思いはありましたが、同時に、そこにわくわくするチャレンジが山ほどあるかと聞かれたら、そうでもないと思っている自分もいたんです。確かに、これまで安心できる大きな舟に乗っていたのに、急に不安定な小舟に飛び移るのは、ドキドキでしたね。でも、それ以上にわくわくする気持ちのほうが強かったので、思い切って転職を決めました。子どもが高校生と中学生になり、子育てからも少し手が離れていたというのも、後押しになったかもしれません」

アドビ日本法人 マーケティング本部 本部長(Adobe Express & エデュケーション) 小池晴子さん(50歳)
アドビ日本法人 マーケティング本部 本部長(Adobe Express & エデュケーション) 小池晴子さん(50歳)