男性も育児を当たり前にしていく時代。でもそれには様々な困難が待ち受けています。本連載では、「お父さんの支援」をライフワークとする、産婦人科医・産業医・医療ライターの平野翔大さんが、医療現場で日々感じている「お父さんの育児」の課題を整理し、解決のためのアドバイスを提案していきます。第3回は、夫婦が育児のパートナーになり、育児トラブルを防ぐために、妊娠中にどのようなことをしておくとよいかをお伝えします。

お父さんに降りかかる「産後の大きな悩み」

 「父親支援」に取り組む、産婦人科医・産業医・医療ライターの平野翔大です。

 過去2回の記事では、男性の育児を取り巻く社会的問題や時代の変化について整理しました。男性の育児には「教育」「経験」「支援」のいずれもが不足していること、社会制度が先行しながらも支援が不十分で「板挟み」のお父さんが多いことを問題提起し、「理想的な父親」ではなく、「誰もがなれて、楽しく育児に取り組める父親」になることが重要と述べました。

 今回の記事では、前回紹介したようなお父さんの失敗やトラブルがなぜ起きてしまうのかについて、男女双方の目線から考えていきます。


「出産後に妻が豹変(ひょうへん)してしまった」

 これは私が多くのお父さんから聞いた、産後の大きな悩み事です。子育てに大きなトラブルがなく、育児に前向きなお父さんでもこのような悩みを抱えることは少なくありません。出産前後での配偶者への愛情の変化について調べた調査でも、男性の場合は配偶者への愛情がそれほど低下しない半面、女性は大きく低下することが示されています。(※1、2)

 よくこれを「産後クライシス」や「マタニティーブルー」といい、「ホルモンバランスが不安定だから」などとされることもあります。確かに女性ホルモンは産後、急激に減少し、それが気分変調の一因になることは事実です。しかし、ホルモンバランスの急激な変化の影響は、あっても2週間程度と考えられ、長期的な愛情の変化について、これだけで説明するには無理があります。

 ではなぜ、産後の妻の愛情は低下しやすいのでしょうか。特に産後に離婚したお母さんに話を聞くと、「昔だったら許せたことが、子どもができたら許せなくなった」と言います。

 子どもがいない、カップルや夫婦の間は、多少自分が嫌な思いをしても「まぁ他にもいい部分はあるよね」と少しは相手を許容することができます。「自分」がされる分には我慢したり、許したりできます。

 しかし出産後、対象が「子ども」に変わると、お母さんはお父さんを許せなくなります。「子どもの体調の変化に関心がない」お父さんはお母さんにとって「子どもを任せられない父親」であり、許せない存在になるのです。

 それは、妊娠中から、女性は「赤ちゃん中心の思考」になっていくからでしょう。女性は日常の過ごし方も、食事も、全てを「赤ちゃん中心」にしながら妊娠期間を過ごします。出産してもその思考は変わりません。育児にあたり、「赤ちゃん中心の考え方」は非常に重要なものです。

 そのようなときに、お父さんが「赤ちゃん中心」ではなく、「自分や仕事中心の思考」でいたら、どうでしょうか。妻は「この人に子どもを任せることはできない」と判断し、色々なことを自分でやろうとします。協力者と見なされないパートナーへの対応は必然的に変わってしまい、愛情も低下していくのではないでしょうか。

次ページから読める内容

  • 多くの母親が話す、「分かってほしかった」こととは
  • お互いが「安心して任せられる」2人であるために
  • 男性が「支援者」から「協働者=パートナー」になるには?
  • 夫も妊娠中に何をすべきか考えることが大切

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