男性も育児を当たり前にしていく時代。でもそれには様々な困難が待ち受けています。本連載では、「お父さんの支援」をライフワークとする、産婦人科医・産業医・医療ライターの平野翔大さんが、医療現場で日々感じている「お父さん育児」の課題を整理し、解決策を提案していきます。第2回は、育児に前向きに取り組んだのにトラブルになってしまったお父さんの「失敗談」を取り上げます。

男性の育児に足りないポイントは?

 「父親支援」に取り組む、産婦人科医・産業医・医療ライターの平野翔大です。

 前回は男性の育児が抱える社会的問題や時代の変化を整理しました。男性の育児には「教育」「経験」「支援」のいずれもが不足していること、社会制度が先行しながらも支援が不十分で「板挟み」のお父さんが多いことを問題提起し、「理想的な父親」ではなく、「誰もがなれて、楽しく育児に取り組める父親」になることが重要と述べました。

 今回の記事では、「教育」「経験」「支援」のない、そんな3人の父親たちから聞いた「失敗談」をご紹介していきます(※個人の特定を避けるため、一部に脚色を入れております)。

Case1 出産に立ち会うために頑張ったが、知識がなかったために…

 ある日の妊婦健診。35週後半の妊婦(Aさん)が来院して血圧を測ったところ、いきなり160程度まで上昇(正常は140以下)しているという報告を助産師から受けました。妊娠中の血圧上昇は「妊娠高血圧症候群」を引き起こすことがあり、速やかに分娩に持ち込むべき状態です。急いでAさんを診察し、同日に緊急で帝王切開手術を行うことにしました。

 このように妊娠中には突然の事態が生じることもありますが、まずは状況を認知していただくために、妊婦さんとパートナーに説明を行います。Aさんにも「これから今の状況や方針をお話ししたいので、パートナーの方に急いで来院していただくことはできますか」と聞きました。

 しかしAさんは「夫は今出張中で、多分来られません」とのこと。パートナーに話さずに帝王切開をするわけにはいかないので、電話で説明することにしました。

 Aさんと近くに住んでいたAさんの実母に概要をお話しした後、パートナーに電話をし、危ない状況であること、速やかな帝王切開の必要があることを説明しました。その時のパートナーの反応は今でも鮮明に覚えています。

 「えっ、予定日まであと1カ月あるのに産まれてしまって大丈夫なんですか! 予定日に休みを取るために出張を今月にしたのに……

 通常の分娩期間である「正期産」は妊娠37週から42週です。つまり35週後半となると、あと1週間と少しで分娩になってもおかしくない時期です。しかしパートナーは「まだ1カ月ある」と思っていました。恐らく40週の「予定日」の前後1週間くらいで産まれると思っていたのでしょう。

 休みを確保するくらい分娩を心待ちにしていたパートナー。思わぬ形で出張先から電話で産声を聞くことになってしまいました。もしAさんのパートナーに、「37週から42週で産まれる」という正しい「知識」があれば、こんなことにならずに済んだかもしれません

次ページから読める内容

  • Case2 育児を頑張っていたが、経験不足からわが子を危険に!
  • Case3 適切な支援が得られず、産後うつに追い込まれた父親
  • なぜこのような問題が生じているのか
  • 制度に環境が追い付かないことでトラブルが起こっている

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