コロナ禍で浮き彫りになった課題を前向きに捉え、日本の公教育を変えたい――。自身も小1と4歳の子どもを育てる、子育てマーケターの森田亜矢子さんが、そんな思いで、先進的な取り組みやキーパーソンを紹介する連載。前編に続き、群馬県館林市教育委員会の佐々木英男さんに、館林市におけるICT活用の展望について聞きます。

【前編】コロナ禍をきっかけにICT活用を前倒し 群馬県館林市
【後編】「復習」から「予習」へ ICT活用で変わる家庭学習 ←今回はココ

 館林市では、コロナによる一斉休校期間中に、オンライン学習支援ツール「スタディサプリ」(リクルート)を市内全域の小中学校に導入し、家庭学習でのICT活用を進めています。

ツールを使えば予習の課題も出せるように

―― 前編は、コロナ禍の休校期間中に、子どもたちの学びを保障するための手段としてスタディサプリを導入した経緯について聞きました。館林市では今後どのように活用しますか。

佐々木英男さん(以下、敬称略) これまでの家庭学習は、基本的に学校で習ったことの復習がメインでした。このオンライン学習ツールを使えば、復習課題の配信だけでなく、これから習うことを動画で見るといった予習の課題も出せるようになりますので、家庭学習の在り方が変わっていくと予想しています

 例えば、家庭学習で予習として動画視聴と確認テストを配信しておけば、授業当日にそれぞれの子どもたちの理解度を、先生が把握できる状態になります。そうなれば、授業の中では、理解が追いついていない子どものサポートに時間を割くことができますよね。また、すでにある程度できている子には、子どもたち同士の学び合いをリードする、ミニ先生のような役割を与えることで、その子自身の理解度をさらに高めることができるようになります。

―― 子どもたちに対する先生の関わり方が、より個別最適化されていくような形になるのですね。翌日の授業につながる課題になれば、家庭学習の位置付けも大きく変わりそうです。

佐々木 このように予習的な課題を設定することや、学習記録を授業でも活用することで、学校の授業は今まで以上に子どもたちの理解度に応じた対応を行うことが可能になると思います。

 また、小学校の低学年や中学年のうちは、復習の宿題を細かく出す先生も多いと思うので、特に管理や丸つけは大変だと思います。

―― 課題に正答できているかどうかだけでなく、欠席していた子や宿題をやってこない子もいますから、アナログ的に管理するのは負荷が高そうですよね。

佐々木 ツールを活用すれば、誰が何をどこまでやっていて、さらにどこまで理解できているかが一目瞭然になりますから、管理や丸つけの負荷は大きく下がると考えられます。浮いた時間を子どもとのコミュニケーションなどに使えるようになると思っています。