コロナ禍で浮き彫りになった課題を前向きに捉え、日本の公教育を変えたい――。自身も小1と4歳の子どもを育てる、子育てマーケターの森田亜矢子さんが、そんな思いで、先進的な取り組みやキーパーソンを紹介する連載。今回は、ICTによって加速するといわれる「子どもを主体とした学び」について、日本初のイエナプランスクール認定校・しなのイエナプランスクールこと大日向小学校校長の桑原昌之さんに聞きます。

【前編】イエナプラン教育 主体性を引き出す意外なポイント ←今回はココ
【後編】子どもの好奇心を育てるには親が与え過ぎないこと

 子育てマーケターの森田亜矢子です。風邪の季節を前に、戦々恐々の日々を過ごしている保護者も多いのではないでしょうか。

 そんな中、私の居住区(東京都目黒区)でも、ICT(情報通信)教育環境の整備が少しずつ進んでいます。9月の上旬に、区の教育委員会から、コロナ等によって学級・学年閉鎖や休校が発生した場合、BYOD(Bring Your Own Device:各家庭や先生が所有するデバイスを利用すること)でZoom朝会を実施する予定との連絡がありました。一足飛びに「オンライン授業」とまで行かなくても、不安の多い日々の中で、新しい教育に向けた希望のようなものを感じます。

 ICT教育環境が整うと、現在主流となっている「一斉授業」が変わり、学びの主体は「先生」から「子ども個人」に移っていくといわれます。先生がチョークと黒板を使って授業をコントロールする従来の日本の教室は、どのように変わっていくのでしょうか。

 今回は、子どもの個性を大切にする教育法として世界的にも有名なイエナプラン教育の日本初の認定校である、私立の大日向小学校校長の桑原昌之さんに、「子どもを中心とした学びとは、どんな学び方なのか」を聞きました。

全員が違う時間割 子ども主体の学びとは?

―― イエナプラン教育では、子ども自身が自分の一日の時間割を作って、好きな順番で勉強に取り組むと聞きました。コロナ禍の1学期はどのようなものでしたか。

桑原校長(以下、敬称略):本校では、子どもたち自身が自分で学習計画を立てて取り組むため、コロナで休校になったからという理由で、学校側から何か特別な時間割やコンテンツを提供するということはありませんでした。自立して学べる子は、学校が休校になっても自分で計画を立てて学んでいけます。

自分で作る時間割。子どもたちは週単位でこのような時間割を自分で作成する(提供/大日向小学校)
自分で作る時間割。子どもたちは週単位でこのような時間割を自分で作成する(提供/大日向小学校)

 ただ、今年度から本校に入学したばかりの1年生や他学年の新入生は、自分で計画して学ぶ方法を知りません。従って、新入生は年度の最初に「学び方を学ぶ」ということを丁寧に進めていきます。

 とはいえ、いきなり学びに入るのではありません。それ以上に重要になるのが、人間関係の土台となるコミュニケーションで、イエナプランでは非常に重視しています。コロナ禍の今春は一斉休校中でしたので、オンラインでのコミュニケーションとなりましたが、画面を通じて、できる限り学校の楽しさが伝わるように心がけました。

 1日の始まりは、サークルタイムという「朝の会」のようなものを行います。休校中はZoomを使いましたが、クラスのみんなが画面の中で顔を合わせて、おしゃべりやダンスをしたり、子どもたちが持ち回りで自分の家の絵本を読んで紹介したりするなどの活動を通じて、コミュニケーションをたっぷり取りました。

 オンラインでも毎日お互いの顔が見える状態を作ることで、自分のクラスにどんな友達がいるのか、子どもたち同士の相互理解を深めることができたと思います。

 その後、5月中旬に分散登校から学校が再開し、徐々に「自分で計画して進める学び方」について「学ぶ」ことを進めました。

―― 授業が始まる前に、クラスの友達のことを知るのは必要ですよね。公立校に通う私の娘は、学校再開後、そのような時間が十分に取られないまま授業が始まったことで、勉強そのものが嫌いになりかけてしまい大変でした。

 子どもたちの時間割がそれぞれ違う場合、先生が何度も同じことを説明しなければならない事態になりますよね。先生が教える部分は、どのように進めているのですか。

次ページから読める内容

  • ICT活用 全員が同じ使い方をする必要はない
  • 「1人1台」と「主体的・対話的で深い学び」の関係性
  • 実はアナログな人間関係のベースが大切

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