コロナ禍で浮き彫りになった、さまざまな課題を前向きに捉え、日本の公教育を変えたい――。自身も小1と4歳の子どもを育てる、子育てマーケターの森田亜矢子さんが、そんな思いで、先進的な取り組みやキーパーソンを紹介します。前編に引き続き、ICT環境整備において、東京都内の公立小学校のトップランナーである小金井市立前原小学校の、ICT主任教諭・蓑手章吾さんに聞きます。ICTによって日本の公教育はどう変わっていくのでしょうか。

【前編】学校が止まると学びが止まった 足りなかったものは
【後編】主体的な学びのために「好き」に加えて必要なこと ←今回はココ

 「コロナ休校によって明らかになったのは、これまでの学校教育は、子どもたちを主体的学習者(=アクティブ・ラーナー)に育成することができなかったという事実でした」。そう語るのは、総務省・スマートスクール実証校の指定を受け、東京都内公立小学校の中で教育ICT環境整備が圧倒的に進んでいる小金井市立前原小学校・ICT主任教諭の蓑手章吾さんです。

 前回に続き、遊びを通じて成長していくために必要なことは何か、さらに、教育の質そのものを変化させる可能性もあるICTの公教育現場での活用の実践例について、蓑手さんに聞きます。

「1日中ダラダラ動画を見続けるのでは」という懸念

―― 前回は、「子どもは、自身の好きなことを通じて、学びに向かう主体性を取り戻せるから、家では積極的に好きなことをさせてあげるほうがいい」というお話でした。

 しかし、本当に自由にさせていると1日中でもYouTubeをダラダラ見続けてしまうと思います。好きに過ごさせてよいのでしょうか? そのような「動画ダラダラ視聴」でも、子どもは成長しますか。

蓑手さん(以下、敬称略):ダラダラとYouTubeを見たり、TVゲームをしていたりするだけだと、そこから自分自身の工夫や試行錯誤のPDCAは生まれませんから、成長するとは言えませんね。

 目標を設定し、実践してみて、振り返り、新たな工夫を考え、また目標に挑む……という一連のPDCAサイクルによって、子どもは成長します。従って、PDCAサイクルを回せるのなら、その対象コンテンツはゲームでも何でもよいと僕は思っています。

 「ゲームをしてもいいけど、その目的を一緒に考えてからしよう」と保護者から持ちかけて、PDCAサイクルが回るようにサポートしてみるとよいかもしれませんね。実践した後は、必ず振り返りをするのも重要です。

―― なるほど。PDCAサイクルを回しながら取り組むことができるなら、「遊び」のジャンルのものを存分にさせてもよいということですね。

 保護者が子どもにしてもらいたいのは、いわゆる「勉強」と呼ばれるものだと思うので、例えば、勉強系コンテンツを並べて、その中から子どもたちに自由に選んでもらうというのはどうでしょうか。

写真はイメージです
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