遠藤 どちらかというと、今の日本では、「ルールは誰かが決めて、自分はそれに従うだけ」というスタンスの人が多い気がしますが、選挙で自分のリーダーを選ぶことができるわけで、本当は、自分自身もルールづくりに関わっている、あるいは、関わる機会を持っているはずなのです。それなのに、「自分の知らないところでいつの間にか決められているルール」と感じてしまうのは、自分がそのルールづくりに参加すべき人であるという自覚がないからなのかなと

 だからこそ、公教育の場で、自分たちの社会のルールづくりに関わる経験をさせることは非常に重要で、私は、その練習を小1からやりましょうと考えています。そして、「自分たちのルールを自分たちでつくり、自分たちでつくったルールはしっかり守る」ということをできるようになってほしいと思っています。

 そうなれば、社会で何か問題が起きたときに、他人事と捉えることはなく、自分たちでなんとかしようと主体的に動けるようになるはずです。

「社会」を自分のものだと思えているか

遠藤 仮に、あなたが徳川家康だったとして、江戸で大火事が起こったとしたら、すぐどうにかして解決しようと動くと思います。

 私たちがこの国の「主権者」であるということは、将軍や王様であるのと同じで、その社会の持ち主であるということです。だから、本来は、主権者の私たち全員が、いつでも主体的に動かなければいけない。しかし、今それができていないのは、「社会」を自分のものだと思えていないからだと感じます。これは、本当の意味での民主主義ではない状態です。

 教科書では、日本は民主主義の国で、国民が主権者であると習いますが、それはただ習っただけであって、実際には自分自身が主権者だと実感できていない。これまでの学校教育は、「日本は自分のものだ」と実感できる教育になっていなかったということだと思います。

 私は、自分の一番身近な社会のルールづくりに参加していくことで、自分が社会をつくっている実感を少しずつ得ていくことができると考えています。その実感をもとに、自分たちの社会は自分たちでつくっていくという基本姿勢を身に付けることが、これからの社会を生きていく子どもたちを育成するうえで最も重要なことです。これは公教育の中でやっていかなければならないことです。

小中高で校則アンケートを実施した熊本市

―― 全国には、子どもたちが理不尽と感じる「ブラック校則」が今でも残っている学校も多いと聞きます。熊本市では昨年、市立の小中高校で、校則に対する現場の意見を聞くアンケートが実施されて話題になりましたね。