コロナ禍で浮き彫りになった課題を前向きに捉え、日本の公教育を変えたい――。自身も小1と4歳の子どもを育てる、子育てマーケターの森田亜矢子さんが、そんな思いで、先進的な取り組みやキーパーソンを紹介する連載。今回はICT活用が、学校と保護者、先生と子ども、子ども同士のコミュニケーションにどのような影響を及ぼすのかについて、教育情報化の専門家である国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの主幹研究員・准教授の豊福晋平さんに聞きます。

【前編】公立小学校 紙の連絡帳のデジタル化によるメリットとは ←今回はココ
【後編】小学校に新たな役割 SNSリテラシーも学ぶ場に

 子育てマーケターの森田亜矢子です。コロナ下の2020年度、学校ではさまざまな行事が中止になったり、見直しになったりと、イレギュラーな状況が続いています。学校側は、感染予防に最大限注意しながら、保護者への広報や質疑応答に苦労していると思います。このような有事の時ほど学校とのコミュニケーションの重要性に気づかされます。

 毎日の送り迎えで先生と直接話す機会があった保育園・幼稚園のときと比べ、小学校入学後は先生とのコミュニケーションの機会が減り、学校との間に距離を感じる保護者も多いのではないでしょうか。

 現在、多くの公立小学校の、先生とのコミュニケーション手段は紙の「連絡帳」というアナログツールで、昭和時代から変わらない状態にあります。さらに、私の娘が通う小学校の連絡帳は、縦書きフォーマット。「縦書き」×「手書き」が私自身にとって非日常手段となっている今、連絡帳を書くたびに違和感を覚えます。学校だよりや学年だよりといったお便りも、ネット配信ではなく、いまだに「紙に印刷」されたものが配布される形が主流です。公立学校のコミュニケーションは、社会のスタンダードから乖離(かいり)しているのかもしれませんね。

 GIGAスクール構想で1人1台の端末が配られると、子どもたちの学び方は大きく変わると言われますが、「学校内外のコミュニケーション」という観点においても、ICTの活用によって大きな変化が訪れるのではないでしょうか。教育情報化の専門家である豊福晋平さんに前・後編で話を聞きます。

紙の連絡帳を使うことによる問題点とは?

森田亜矢子(以下、――) 私の娘は、ICTを積極的に活用する保育園に通っていたので、小学校入学と同時に、コミュニケーション手段が「昭和」に戻ったことに戸惑いました

豊福晋平さん(以下、敬称略) 保育園・幼稚園は、積極的に連絡帳アプリを導入するなどコミュニケーションにおけるICT活用を進めており、小学校と差が開いてしまっています。

 とはいえ、保育園・幼稚園でも、「手書きのほうが良い」という価値観を持っているケースもあるので、ICTを積極的に活用しながらコミュニケーションの合理化をはかる園と、そうでない園とに二極化しています。

 恐らく、小学校にも手書き至上主義の先生はいるので、コロナのような「物理的に会うことができない」「なるべく接触を避けていかなければならない」という状況が起こらなければ、GIGAスクール構想で1人1台の端末配備が整っても、コミュニケーション手段は全く進化しないという可能性もあったと思います。

―― もしかしたら保護者の中には、「公立小学校はこんなものだ」と思っていて、特に不満を感じていないケースもあると思います。私たち保護者が気づいていない、現状の問題点を教えてください

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