偏差値35から東京大学に合格した現役東大生、西岡壱誠さんと一緒に「子どもを伸ばす親の条件」を考えるコラムも、いよいよ最終回。今までの議論から「4つの条件」を引き出します。聞き手は引き続き、教育分野で取材活動を続けてきた加藤紀子さん。ベストセラー『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)の著者でもある加藤さんが、西岡さんの経験を、普遍的な子育ての法則と重ねていきます。

西岡さんは東大合格後、漫画『ドラゴン桜2』の担当編集となり、多くの東大生に、育ってきた家庭環境や実践してきた勉強法などを取材してきました。ドラマ日曜劇場「ドラゴン桜」では、脚本の監修(東大監修)を担当。そんな活動の中で、「頭を良くするには、メンタルの力(非認知能力)が大事」と痛感し、2021年5月、「受験勉強で得られる非認知能力」をテーマにした『東大メンタル 「ドラゴン桜」に学ぶ やりたくないことでも結果を出す技術』(日経BP)を出版、大きな反響を呼んでいます。

西岡さんが考える「子どもを伸ばす親の4つの条件」とは?

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子どもを伸ばす親の条件その1 「子どもの話をたくさん聞く」

編集部(以下、――) 「過保護」の話が、この連載の第2回で出ました。過保護は全然悪くないけど、過干渉はいけない、と。けれど、この線引きはなかなか難しいです。

西岡壱誠(以下、西岡) 東大生に取材すると、親によく質問をされたという話を聞きます。

加藤紀子(以下、加藤) 逆にいうと、「~しなさい」という一方的な言い方はあまりされなかったのですね。

西岡 それこそ「親には質問しかされたことがない」という東大生もいて、日常生活から「何したいの?」「どう思うの?」「なぜそう考えるの?」と聞かれてばかりだった、と。そうなると自分で選択したり、理由を考えたりしなきゃいけないので、自分の思いを言葉にするっていうクセがつきます。その東大生は、「自分の人生に、自分で理由をつけないといけないんだな」と思うようになったそうです。だから、もしも親に「なぜ」と聞かれたら、こう答えるという「理由」を自然と考えている、と。

 そういうところから「主体性」が生まれると思います。

加藤 「なぜ?」や「どうやって?」といった質問は、YESかNOかで答えられないので、自然と子どもの発話量が多くなります。そうすると、親は聞き役に回れるんですよね。

 児童精神科医の故・佐々木正美先生は、人は正しいことをたくさん伝えてもらうと安心するわけではなく、たくさん聞いてもらうことで安心するということをおっしゃっていました。臨床心理学者の故・河合隼雄先生も「ゆっくりと待って子どもの声に耳を傾けたら、子どもはもっと素晴らしいことを言ってくれます」という言葉を残しています。