偏差値35から東大に合格した現役東大生、西岡壱誠さんと一緒に「子どもを伸ばす親の条件」を考える、このコラム。教育分野で取材活動を続け、ベストセラー『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)の著者でもある加藤紀子さんが聞き手となって、西岡さんの体験から普遍的な子育ての法則を引き出します。

西岡さんは東大合格後、漫画『ドラゴン桜2』の担当編集となり、多くの東大生に、育ってきた家庭環境や実践してきた勉強法などを取材してきました。ドラマ日曜劇場「ドラゴン桜」では、脚本の監修(東大監修)を担当。そんな活動の中で、「頭を良くするには、メンタルの力(非認知能力)が大事」と痛感し、今年5月、「受験勉強で得られる非認知能力」をテーマにした『東大メンタル 「ドラゴン桜」に学ぶ やりたくないことでも結果を出す技術』(日経BP)を出版、大きな反響を呼んでいます。

今回のテーマは前回に続き中学受験。中学受験にトラウマがあるという西岡さんと一緒に「東大生になった今だから分かる、中学受験の正解」を考えます。

【1】偏差値35のいじめられっ子が、東大受験を決意した理由
【2】偏差値35から東大合格した僕と母の「中学受験トラウマ」
【3】東大生だから分かる「中学受験で失敗していい理由」 ←今回はココ
【4】誇れるものがない子どもにこそ、東大受験を勧めたい理由

「東大合格」はお金で買える?

加藤紀子(以下、加藤) 前回は、西岡さんが中学受験したときのお話を伺いました。

 西岡さんにとって中学受験はトラウマで、お母さんにも挫折感があったんじゃないか、というお話でした。でも、その挫折感が逆にプラスに働いて、西岡さんの「偏差値35からの東大合格」につながったように感じます。

 要するに「中学受験で人生は決まらない」ということなんですよね。

編集部(以下、――) でも、中学受験の渦中にいる親にしてみれば、今、目の前にある入試で成功するかどうかが全て……といった気持ちになりがちですよね。どうしても。

西岡壱誠(以下、西岡) 実際、難関の中高一貫校から東大に進学する学生は多いわけですし。

 現実には『ドラゴン桜』とは真逆(まぎゃく)で、子どもを東大に合格させたいって本気で思うなら、親の頑張りとお金でなんとかなってしまう状況もあります。それこそ、子どもが生まれたら東京のこの地区に住んで、この塾に入れて、この学校に合格させて……っていうことをすれば、そこそこ高い確率で東大に合格させられるかもしれません。

 今は東大受験がメソッドとして攻略されていて、そのメソッドを手に入れればかなり合格しやすい環境にはなっていると思います

加藤 東大攻略のメソッドというのは、例えば鉄緑会ですね。東京と大阪に拠点を持つ塾で、灘や御三家といった超進学校の生徒が数多く在籍しています。

―― 「東京大学受験指導専門塾」を標榜する塾ですね。最難関の理科三類で定員の半数以上を鉄緑会出身生が占めるなど、合格実績も断トツです。