偏差値35から東大合格した現役東大生、西岡壱誠さんと一緒に「子どもを伸ばす親の条件」を考える、このコラム。教育分野で取材活動を続けてきた加藤紀子さんが聞き手となって、西岡さんの体験から普遍的な子育ての法則を引き出します。

西岡さんは東大合格後、漫画『ドラゴン桜2』の担当編集となり、多くの東大生に、育ってきた家庭環境や実践してきた勉強法などを取材してきました。ドラマ日曜劇場「ドラゴン桜」では、脚本の監修(東大監修)を担当。そんな活動の中で「頭を良くするには、メンタルの力(非認知能力)が大事」と痛感し、今年5月、「受験勉強で得られる非認知能力」をテーマにした『東大メンタル 「ドラゴン桜」に学ぶ やりたくないことでも結果を出す技術』(日経BP)を出版、大きな反響を呼んでいます。

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東大合格必勝法家庭の10カ条 「夫婦円満」の本質は「心理的安全性」

編集部(以下、――) 前回は、勉強が苦手でいじめられっ子だった西岡壱誠さんが、偏差値を30以上もアップさせて東大に合格するまでのストーリーを伺いました。今回は、いよいよ本題である「親」の関わりにフォーカスを当てます。

 東大生の育った家庭環境に共通するものって、何だと思いますか?

西岡壱誠(以下、西岡) ドラマでも紹介しましたが、『ドラゴン桜2』に「東大合格必勝法 家庭の10カ条」があります。

『ドラゴン桜2』第5巻・37限目「家庭の10カ条」(C)Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜2』第5巻・37限目「家庭の10カ条」(C)Norifusa Mita/Cork

 個人的に大事だと思うのは、8個目にある「夫婦仲良くする」ってことですね。ただ、誤解していただきたくないのですが、この表現で伝えたいことは「子どもにとって家庭が安心できる場所になっているかどうか」です

加藤紀子(以下、加藤) シングルの親御さんでも、家庭が安心できる場所になっているケースはたくさんありますよね。

 私がお手伝いしている雑誌に、東大生249人に子どもの頃の生活習慣を尋ねたアンケート結果が紹介されていました(『プレジデントFamily』2021夏号)。そこからも、東大生が育った家庭は「心の安定」が得やすい環境だったことが分かります。子どもの頃、親が「話をよく聞いてくれた」「趣味や好きなことを応援してくれた」という学生が9割以上、「失敗を責めなかった」という回答も8割以上でした。

西岡 『ドラゴン桜2』で、天野晃一郎くんのお母さんが、桜木建二に、自分が過保護過ぎるのではないかと相談するシーンがあります。

『ドラゴン桜2』第9巻・65限目「過保護でなぜ悪い」(C)Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜2』第9巻・65限目「過保護でなぜ悪い」(C)Norifusa Mita/Cork