ベビーシッターによる、幼い子どもへの強制わいせつ容疑での逮捕が続いたことなどを受けて、性犯罪歴のある人が子どもに関わる仕事に就けないようにする仕組みを求める声が高まっています。以前から政治の場でこの問題に取り組んできた衆院議員の木村弥生さんと、「#保育教育現場の性犯罪をゼロに」を掲げて活動する認定NPO法人フローレンスの前田晃平さんに、現在の日本における課題や、それを解決する手段、一人ひとりの親が今できることなどについて聞きました。

指導的立場を利用して加害者になる

 「性犯罪は魂の殺人ともいわれ、被害者の自己肯定感を根こそぎ奪うものです。保育や教育の現場においては、『この人の言うことを聞きなさい』と親や周囲から子どもが言われている人が、その指導的立場を利用して加害者になり、卑劣にも両親や他の人に絶対に口外しないようにプレッシャーをかけることもあります」。数年前からこの問題に取り組んでいる、衆院議員の木村弥生さんはそう話します。

 「#保育教育現場の性犯罪をゼロに」を掲げてソーシャルアクションを推進している認定NPO法人フローレンスのスタッフの前田晃平さんもこう言います。「保育や教育現場における性犯罪は、そもそも被害が露見しにくいです。悲しい事件が後を絶ちませんが、表に出てきていない事例はもっと多くあるはずで、今見えているものは氷山の一角だと思います。

 法務省の調査結果によると、小児わいせつは再犯率が高いことが指摘されています。しかし現在の日本には、子どもに関わる仕事に就く人に性犯罪歴があるかどうかを確かめる方法はありません」(前田さん)

 罪を犯したことで、その仕事に就けなくなる仕組みはないのでしょうか。前田さんはこう指摘します。「ベビーシッターは届け出制で、そもそも資格が不要のため、罪を犯したから取り消されるといった制限はありません。保育士は、禁錮以上の刑や、児童ポルノ単純所持による罰金刑で保育士登録が取り消されますが、2年で再登録が可能です。

 教員は、わいせつ行為をして教員免許を失っても、たった3年で再取得できます。7月下旬、萩生田光一文部科学相が、再取得を可能にしている教員免許法の改正に前向きな発言をしました。これは大きな前進で、必要なことですが、実際にチェックする仕組みがなければ、その人が子どもに関わる別の仕事に就くことは可能です。つまり現状の制度では、性犯罪歴を理由に登録や免許を取り消されたとしても、子どもに関わるその他の仕事を転々と渡り歩くことができるのです」(前田さん)

 どれだけ親が気を付けても、保育や教育の場に性犯罪者が紛れていると、子どもを守ることが難しいのが現実です。「個別の登録や免許を取り消すこと自体はもちろん必要ですが、それだけでは渡り歩きを防ぐことはできません。保育や教育現場で仕事に就く前に、性犯罪歴をチェックできる仕組みが必要です。

 私自身も子育て中なのでよく分かりますが、子どもが小さいうちは、育児や仕事で本当に忙しくて、社会課題に関心を持つ余裕はなかなか持てないかもしれません。でも、子育て中のお母さんやお父さんに私がこの話をすると、『それは必要な仕組みだ』と言います。ぜひ関心を持ってもらえるとうれしいです」(前田さん)