政治が動くには、世論の後押しが必要

 「教員は文部科学省、保育士は厚生労働省、ベビーシッターは企業という視点では経済産業省、助成制度に関わる部分は内閣府、犯歴については執行が確定するまでは法務省、確定後は住民基本台帳が関わるので総務省など、複数の省庁が関わる問題です。だからこそ政治の力で進めないといけないと思っています。ただ政治が動くには、世論の後押しが必要です」。木村さんはそう話します。

 児童買春・児童ポルノ禁止法の改正を検討する勉強会を与党の有志議員とこれまで10回以上開いてきたという木村さん。その中で日本版DBSについても議論を重ねてきました。「日本版DBSの創設には時間がかかる可能性があるため、今できることから始めたいと、野田聖子議員ら与党の有志議員で現行の児童買春・児童ポルノ禁止法を改正・強化する方向での議員立法ができないか、秋の臨時国会に向けて検討準備中です。

 具体的には、教員など国家資格のある子どもに関わる仕事については、児童買春・児童ポルノ禁止法違反などによる罰金刑を受けた場合も欠格事由とする、また、ベビーシッターなど国家資格が必要ではないが子どもに関わる仕事については、児童買春・児童ポルノ禁止法違反などによる罰金刑を受けた人が就けないよう雇用者に努力義務を課す、などができないか検討しています。

 今年6月、政府は『性犯罪・性暴力対策の強化の方針』を決定し、2022年度までの3年間を集中強化期間としています。性犯罪や性暴力対策に国を挙げて取り組む機運は高まっていると感じています」(木村さん)

今親ができることは

 日本版DBSへの関心は高まっています。ベビーシッターへの無犯罪証明書の発行を求めて今年6月に署名を開始した「無犯罪証明書を求める現場ベビーシッターの会」とフローレンスは7月末、2万1000筆以上集まった署名を、橋本聖子内閣府特命担当相に直接手渡しました。

 前田さんは言います。「7月14日に日本版DBS創設を求める記者会見を開いてから約2週間で署名の数は10倍になりました。署名の数が多ければ、政治家の反応や、その後の対応も大きく変わってきます。木村議員をはじめとした有志議員が積極的に動いてくれていますが、実現させるには、一人ひとりの関心を可視化する必要があります。

 今、実現できるかどうかの瀬戸際だなと感じています。SNSなどで一人ひとりが声を上げて拡散し、多くの人が関心を持っていることを可視化して示すことができれば、さらに前へ進むと思います」

取材・文/小林浩子(日経DUAL編集部) イメージ写真/PIXTA