ベビーシッターのマッチングアプリ「キッズライン」に登録していたシッターによる、幼い子どもへの強制わいせつ容疑での逮捕が相次ぎました。過去にキッズラインを利用したことがあり、ビジネス・マッチングのサービスを手掛けるWaris(ワリス)共同代表の田中美和さんに、親として感じた問題点などについて聞きました。

レビューには当たり障りのないコメントしか残せなかった

 今2歳3カ月の娘が0歳児の頃から、月に1回、たまに2回、といった頻度で、キッズラインのサービスを利用してきました。こんな事件が起こってしまい、本当に残念ですし、被害に遭われた方々を思うと同じ親として胸が張り裂けそうな気持ちになります。

 キッズラインのCtoCプラットフォームのサービス自体は画期的だったと思いますし、わが家のように実家が近くにない共働き世帯にとってなくてはならない存在でした。その観点から、今回のことでは、利用者として、またビジネス・マッチングを行う経営者として、いろいろと思うところがありました。

 特に助かっていたのは、緊急時ですね。夜の19時や20時に娘が急に発熱してしまい、翌日は保育園に行けないというときなどは、翌朝の予定が空いているシッターさんを探して本人と直接やりとりができる同社のサービスに何度も救われました。

 これまで何人ものシッターさんに来てもらいましたが、ほとんどのシッターさんはとても良い方でした。ただ、10人に1人くらい子どもへの接し方やあやし方で違和感を抱いた人もいました。「ちょっと冷たいかな、もうちょっと笑顔で子どもに接してほしいな」などと感じることがなかったわけではありません。

 問題は、この事件を詳しく報じているジャーナリストの中野円佳さんも指摘しているように、レビューが機能していなかったことにもあると思います。同社には相互レビューの仕組みがあり、それ自体はいいと思うのですが、これまでは書いたレビューが直接相手に行ってしまうシステムだったため、私も「丁寧に子どもを見ていただきました」といった当たり障りのないコメントしか残すことができませんでした。相手のシッターさんにこちらの住所を知られているということもありますし、自分が悪い評価をしたことでそのシッターさんが仕事をしにくくなったり、自分自身が今後、このプラットフォームを使いにくくなったりするかもしれない、といった心理が働いてしまったからです。5段階で評価する際にも、デフォルトが「5」に設定されていたので、そのままにしてしまっていました。

 利用者がシッターさんを選ぶ際には、プロフィルに書かれた資格の有無や経験はもちろんのこと、レビューも判断材料になります。今回の被害者の親御さんも、恐らくレビューを見た上でお願いしていたのだと思います。

 書いたコメントが直接シッターさんに届くのではなく、一度仲介事業者が確認するとか、仲介事業者に届くレビューと、シッターさん本人に届くレビューとの2段階にする、といった仕組みであれば、ちょっとした疑念も報告しやすくなるため、こうした不幸な事件を防ぐことができたかもしれません。そうした、利用者が感じる「ちょっとした疑問」「ちょっとした不安」の中に、重大なミスマッチが隠されていることが多いのではないでしょうか。逆に、シッターさんが利用者の家庭で嫌な思いや怖い思いをすることだってあるはずです。

スクリーニングは厳格であるべき

 キッズラインからは6月18日、利用者向けのメールで対策の報告がありました。その中には評価機能の見直しも含まれています。新しい仕組みがしっかり機能して、利用者、シッターさん双方が安全に利用できるようになってほしいです。

 シッターさんのスクリーニング(適格審査)の強化もお願いしたいです。履歴書や職務経歴書などに書かれている資格や経歴だけでは、人の資質を見極めることは難しいのではないでしょうか。シッターさんの登録段階での面談はしていたということですが、対面のコミュニケーションをより強化してもらいたいです。特にシッターサービスは子どもが受け手になり、身体接触も伴うものだけに、スクリーニングはより厳格であるべきです。