ベビーシッターのマッチングアプリ「キッズライン」に登録していたシッターによる、幼い子どもへの強制わいせつ容疑での逮捕が相次ぎました(詳しくはこちら)。

共働き家庭にとって、ベビーシッターは貴重な保育の担い手です。大切な子どもたちを預けるにあたり、どんな点に注意してサービスを選べばいいのでしょうか。今回は、事件発覚後からこの問題について発信を続けているジャーナリストの治部れんげさんに聞きました。

電話や対面での「勘」も大切にする

 今回の事件には胸を痛めています。事件の卑劣さに加え、キッズラインの経営者がいまだに公の場で謝罪や説明をしていないことにも大変な憤りを感じています。

 とはいえ、共働きで核家族だと、保育園だけでは対応しきれず、ベビーシッターに頼らざるを得ない場面があります。キッズラインのような、スマホ一つで近所のシッターを検索でき、オンラインで直接やりとりできるシステムは、忙しい親にとってはラクですし、ユーザーインターフェースとしては優れていたと思います。

 しかしながら、本来、自分の求める条件に合致し、かつ信頼できるシッター(会社)を探すのは、かなり大変な作業のはずです。私もこれまで2人の子どもが未就学児の時期に数百回、数十人のシッターさんにお願いしてきましたが、本当に信頼できてまたお願いしたいと思えたのは数人です。

 キッズラインの利用者の口コミには「いい人が来てくれた」という意見もあり、優秀なシッターさんもいるでしょう。今回の事件は、子どもが好きで良心と倫理観をもって働いている多くのシッターさんにとって大変に困った状況だと思います。シッターさんたちがいなかったら、わが家は核家族で共働きを続けることは不可能だったと思いますし、何人かの方について、子どもは家族のように慕っています。

 一方で、苦い経験も何度かありました。過去にある大手シッター会社に頼もうとしたときは、電話窓口に出た担当者の態度が横柄で、お願いするのをやめました。また、別のシッター会社からは、勤務時間中に携帯電話で友人と話したり、子どもに意地悪な言葉を放ったりするなど、かなり問題のある人が派遣されてきたことがありました(数年後に子どもから報告を受けて発覚しました)。

 このシッターは、事前の自己紹介文に「子どもを2人育てた経験あり。子どもが大好きです」と書いてあり、文面から受ける印象は完璧に思えました。しかし、やはり直接話をしたり、対面したりすることでしか分からないものがあります。

 私の経験から言えば、登録や利用の前に、シッターさんと直接のやりとりができなくても、少なくともシッター会社の担当者とは、電話や対面で直接話をしたほうがいいと思います。そこで、担当者の態度が偉そうだったり、質問にきちんと答えなかったりして「何か変」と感じたら、登録や依頼はやめたほうがいい。日経DUALの読者なら、仕事で数多くの人に接しているはずなので、こうした「勘」や「人を見る目」は、あながち外れてはいないと思うのです。

 シッター本人との事前面談制度がある会社の場合は、それを利用しましょう。こうした制度がなくても、できれば初回は親が在宅で仕事をしている日に利用し、子どもとシッターの様子を親のほうからこまめに見に行く。問題がなさそうだったら次回もお願いするようにします。信頼できる人だと思ったら、できるだけ毎回その人に来てもらえるよう、シッター会社に頼んでみるのもいいでしょう。

 ただし、保護者の自助努力だけでは、どうしようもない面もあります。現に、キッズラインの登録シッターによる2件目の性虐待は、保護者が在宅勤務中に同じ家の中で起きてしまいました。保護者の方がお子さんに丁寧に話を聞き、警察に通報したことで発覚しましたが、他にも表に出ていないだけで、同種の問題が起きている可能性があると思います。これについては、1件目が起きた後、キッズラインが利用者に説明責任を果たさなかったところが問題だったと私は思います。

 休校・休園などの緊急事態では難しいかもしれませんが、理想を言えば、普段から「週に1回はシッターさんにお願いする」などと頻度を決め、その中でどの会社がいいか、じっくり選ぶプロセスが必要だと思います。「急にシッターが必要になったけれど、初めてでよく分からない」という切羽詰まった状況では、選択肢が限られ、冷静な判断がしづらくなるからです。

 かけがえのないわが子の面倒を他人にお願いするのが、シッターです。労力と時間、コストは十分にかけてしかるべきです。