中学・高校・大学入試で「表現力」を問われる出題が増えています。親の世代は経験していない評価基準ということもあり、表現力を養成する塾や習い事に通わせたほうがよいのかと翻弄される親もいるでしょう。今こそ改めて「表現力」とは何か、どのように育むものなのかを考えてみませんか。この連載では、童話作家で3人の子の母、まつざわくみさんが実践する、わが子の表現力を育む方法を聞いていきます。

【童話作家の私が育む、わが子の「想いを言葉にする力」】ラインアップ
子の表現力を育てる「おしゃべり日記」と「暗やみ絵本」
毎晩7時に配達 家族同士で思いを伝える居間のポスト

日記から生まれた童話が受賞

 「わたしは大事に使われた古い物にだけあらわれるようせいです。まほうの力で、一つだけねがいをかなえてあげましょう」

 これは童話作家のまつざわくみさんの長女・彩野(あの)さんが小学3年生の時に書いた童話の一説です。この作品は、『第33回 新美南吉童話賞』の自由創作部門(小学生低学年の部)で最高賞に当たる「優秀賞」を受賞しました。

小3の時に書いた作文で『第33回 新美南吉童話賞』の自由創作部門(小学生低学年の部)で「優秀賞」を受賞した長女の彩野(あの)さん
小3の時に書いた作文で『第33回 新美南吉童話賞』の自由創作部門(小学生低学年の部)で「優秀賞」を受賞した長女の彩野(あの)さん

 受賞作『赤いふでばこのねがい』は、母が子どもの頃に愛用していた“赤いふでばこ”と、それを受け継ぎ大切に使い続ける主人公との互いへの想いを温かく描いたファンタジックなお話です。あらすじは次の通りです。

 主人公のあかりはある日、同級生に赤いふでばこの古さをからかわれて新しい筆箱を買ってもらうも、赤いふでばこへの愛着から葛藤し、「帰り道ではウキウキしたのに、家に着いたらまたまよった気持ちになり」ます。そして、「とうとう古い赤いふでばこのことばかりを考えながらねました」。

 一方の赤いふでばこも、「お母さんの道具ばこから久しぶりに出されて、あかりの手にはじめてのせられた日のこと」など、あかりとの思い出を振り返ります。その瞬間、ピカッと目の前が光り妖精が現れ、冒頭のセリフを赤いふでばこに告げます。

 赤いふでばこは、とっさに湧いた「新ぴんにもどりたい!」という願いを「ぐっとこらえて」、近づくバレエの発表会で悩んでいたあかりを思って「バレエの発表会できんちょうしないでおどれるようにしてあげてください」と、妖精に頼みます。

 また母の道具箱にしまわれる覚悟をしていた赤いふでばこですが、気づくとあかりが家で日記を書くのに使われて驚きます。あかりは「おまもりみたいな」赤いふでばこをこれからも家で使い続けることにしたのです。そして、赤いふでばこは日記の内容からあかりがバレエの発表会で「いつも通りどうどうと」踊れたことを知ります。

 このお話は彩野さんの実体験に基づいて書かれました。実際に母のまつざわさんが幼少期に愛用していた赤い革の筆箱を大切に使っていた彩野さんは、新しい筆箱との対面を喜ぶ一方、愛着の深い赤いふでばことの別れに強い寂しさを抱いたことを日記に記していました。

受賞作は、小学校で日々宿題として書いていた日記帳から生まれました
受賞作は、小学校で日々宿題として書いていた日記帳から生まれました

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