―― 小学生以上の親になると「勉強にも同じくらい集中してほしい」とつい考えてしまいそうです。

鈴木 礼儀作法は別として、生きていく上で必要なことであれば、子ども自身がちゃんと自分で覚えようとするはず。学校で勉強ができなくて恥ずかしいと思ったら、そのときにやればいいんです。

 ときどくんという東大卒の有名なプロゲーマーがいるのですが、彼は「ゲーム1時間につき、勉強を1時間しなさい」と親に言われたので、ゲームを5時間やるために5時間勉強したそうです。ときどくんにはゲームという愛すべきものがあったから、そのために勉強をがんばった。とてつもなく好きなものがあるというのは、大きな強みになります。

 メンタリストDaiGoくんの弟で、クイズ番組にも出演している現役東大生の松丸亮吾くんは、「勉強を頑張ったらごほうびを買ってあげる」と言われて育ったそうです。もので釣るようなやり方は良くないと言われていますが、松丸くんにとっては効果があったようです。実は僕も同じ。パソコンを買ってもらいたくて、そのために勉強しました。

 大人が仕事を頑張るのも、給料を上げるためですよね。おもちゃやゲーム欲しさにやる気を出せる子なら、親がそうやって導いてあげてもいいのではないでしょうか。

絵を習うよりも、どんな絵が好きかを先に考えさせたい

―― 習い事も、ハマるものとハマらないものがありますよね。スポーツでもピアノでも、やってはいるけれど、本当に好きかどうかは分からないということも。親はどう見極めたらいいと思いますか?

鈴木 実は最近、息子が絵を習いたいと言っています。でも、簡単に教室に行かせるよりも、どんな絵が好きかを自分で考えさせるほうが先なのではないかと考えています。テクニックを徹底的に教えるというやり方ももちろんあるでしょう。でも、僕自身が絵を習いたいと思って画塾に通ったものの、全く身に付かなかったんです。だから、習い事も本当にモチベーションが高くなったそのときにやらせてあげたいと思っています。

 息子にはとことん好きになれるものを自分で見つけてもらいたいし、増やしてもらいたい。僕が息子に与えられるものがあるとすれば、何かに触れ合う機会を増やすこと。そのためには海に連れて行ったり、虫を触らせたりもしていますが、それ以上、押し付けられるものはないような気がしています。

文/樋口可奈子