「知識がある」≠「仕事ができる」

―― 銀行は業種柄、順守しなくてはいけないルールがたくさんありますね。「『知識があること』=『仕事ができることだ』と勘違いしている側面がある」と、以前おっしゃっていましたね。

佐久間 はい、その知識も自ら身に付けたものではなく、マニュアルを覚えただけという場合が多いです。業務遂行に当たり、関係する法律などの知識が必要なこともあり、それらを覚えていることが素晴らしいことだと勘違いしてしまっているところがあります。

―― そこに女性が入ると多様性が生まれ、イノベーションにつながるということでしょうか?

佐久間 そうです。企業の仕組み自体を変えなければ、女性のキャリアの継続が難しい面もあります。そこを解決するためにも、ダイバーシティ推進の部署を作りました。現在、グループ会社「ちばぎんハートフル」社長を務めている初代女性部長を中心にいろいろなことを考えてもらって、女性が働きやすい職場作りをしてもらいました。

 彼女たちがルールのないところでゼロから始めてくれました。そうした取り組みのおかげで、みんなが頭を切り替えることができたのだと思っています。

異論を唱える勇気

「確かに男性社会特有の忖度文化を感じる場面はあります」(石渡さん)
「確かに男性社会特有の忖度文化を感じる場面はあります」(石渡さん)

―― 男性の多い職場で働く女性社員はマイノリティの立場。男性に囲まれても恐れずに自分の意見を表明するという重要な役割を担わされているのかもしれません。気を付けなければ、多数派である男性の意見に同調するリスクもあると思います。石渡さんは忖度文化を感じることはありますか?

石渡さん(以下、石渡) 確かに男性社会特有の忖度文化を感じる場面はあります。男性の輪の中に入っていく勇気や居心地の悪さのようなもの――、既にできてしまっている「雰囲気」に飛び込むときに、心理的なハードルを感じることはありますね。

―― 女性活躍が推進されている今、日本中で、「初の女性役員」「初の女性部長」がどんどん生まれており、その方々にとっては男性の輪の中に飛び込む勇気が必要になるということですね。

 花王では、「基幹人材選抜で、組織の男女比に応じた目安を設ける」「人事会議で上級候補に女性が含まれているかを確認しながら議論している」ということが実践されているそうですね。これは素晴らしい取り組みだと思います。

1930年代から女性が活躍していた

石渡 はい。この仕組みは一朝一夕にできたわけではありません。人事部門の中に女性活躍を推進する組織は約30年前からありました。現在は「フェーズ3」となり、「女性、女性」と声高に言う時代は既に過去のものになっています。

石渡 1934年に設立された長瀬家事科学研究所は、正しい洗濯の方法や洗剤の使い方を生活者に幅広く啓発する活動をしていました。その役割は主に女性が担っていたんです。こうした女性活躍の素地がこの時代からあったということが、わが社の背景にはあります。

 私もこの長瀬家事科学研究所の流れをくむ、花王生活科学研究所に配属されました。そこには優秀な女性がたくさんいました。花王は、せっけんや洗剤、化粧品といった日用品を扱う、生活者に寄り添う企業ですので、女性が活躍しやすい素地があると思います。

―― しかし、女性がよく使う商品やサービスを手掛ける企業だからといって、その企業で女性が活躍できているかというと必ずしもそうではありません。アパレルや化粧品メーカーでも、まだまだ経営陣に女性が少ないですよね。単純に考えれば女性用下着や化粧品メーカーであれば、もっと経営陣に女性がいればよいのにと感じます。

石渡 例えばわが社でも、工場や製造を担当するような部門は男性が中心です。少なくとも商品を企画する部署は半分以上が女性なので、そういう意味では多様性が商品開発にも生かされていると思います。