まずは、配偶者控除と第3号被保険者をなくすこと

―― 日本では女性の就業率自体は上がっているものの、非正規雇用の比率がいまだに高く、賃金格差も埋まっていないという状況です。この差を埋めるにはどうすればいいでしょうか。

出口 男女格差の大きな原因の一つとして、社会保険の「第3号被保険者」という制度があります。第3号被保険者とは、年収130万円未満で夫(妻)に扶養されている妻(夫)が加入する保険で、加入者は保険料の自己負担なしに老後の年金を受け取ることができます。主に加入している女性の労働意欲をそぎ、雇用の男女差を生む原因となっています。

 まずやるべきは、配偶者控除とともに、第3号被保険者をなくすこと。それには厚生年金に加入する人の範囲を広げること、いわゆる「適用拡大」が最適の政策です。

 2000年代に当時のドイツのゲアハルト・シュレーダー首相が行ったように、雇用形態に関わりなく、被用者は全員、厚生年金に加入させるべきです。国民年金は自営業者のもの、厚生年金は被用者のものという原理原則に戻るべきです。これにより正規・非正規にかかわらず、雇用されて働いている限りは厚生年金がなくならないから、転職もしやすくなるでしょう。

―― 約20年前のドイツでできたことが、今の日本でなぜできないのでしょうか。

出口 保険料の負担が増す中小企業が反対しているからです。政治もそんな中小企業を守っています。

 そもそも世界で最初に社会保険制度を作ったのは、19世紀末のドイツ(現)の首相ビスマルクでした。シュレーダーは反対勢力に対して、ビスマルクを例に出し、「人を雇うということは、その人の人生に責任を持つということだ」と言い切りました。社会保険料を払えない企業は、人を雇う資格がないと、正面から切り返したのです。

 日本では中小企業が適用拡大に反対し、社会保険料さえ払えないようなゾンビ企業が生き残っています。適用拡大によりゾンビ企業が市場から退出すれば、強い体質の企業だけが残り、日本の産業全体が強くなります。日本は、企業をつぶしたらいけない、雇われた人がかわいそうだという浪花節に走りがちですが、それをやっていると永遠に企業は強くなりません。ゾンビ企業がきちんと淘汰されるような仕組みを整えないと。