男性も大黒柱バイアスに苦しんでいる

―― リアルタイムで質問が100以上寄せられていますので、そこからいくつかの質問を取り上げたいと思います。1つ目の質問です。「男性管理職にとって、女性が管理職になることは実のところ面白くないことなのではないでしょうか。女性活躍の男性にとってのメリットが大きければ推進すると思いますが、無意識に、女性より優位に立ちたいと思う心理が男性にはあると思います。その男性側の心理を払拭する切り札は何でしょうか」

石川 その切り札が分かっていたら、私はノーベル賞をもらえますよね(笑)。女性より優位に立ちたいから、女性が管理職になるのは面白くないと思う男性も中にはいるかもしれません。

 以前、私はあるメディアで「大黒柱バイアス」について読んだことがあります。「男は家庭において大黒柱でなくてはならない」「男はリーダーでなくてはいけない」「男は出世しなくてはいけない」といった「男はこうあるべき」という考え方があります。先ほどは女性のことを話しましたが、そういう固定観念に縛られて、それが理由で苦しんでいる男性もたくさんいることは事実です。

 ある調査によると、ジェンダーの不平等さと男性の自殺率に相関関係があるのではないかという見方もあります。つまり、社会が男性に求める「男らしさ」自体が男性にとってのつらさになっている部分もあると思います。ですから、必ずしも男性が上に立つことが、男性の幸せにつながることでもないと思います。

―― ありがとうございます。では、次の質問に移りましょう。「ジェンダーギャップを埋めるためには女性側の取り組みではなく男性中心の社会構造を変えるべきだと思います。そのために取り組みの事例、他国の事例を教えてください」

松田 直接のお答えにはなりませんが、企業活動について、今、内閣府で「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」という取り組みを行っています。これはもともとオーストラリアで始まった運動で、女性活躍を男性リーダーが推進していくというものです。参加人数はどんどん増えていると承知しています。

 もう一つ、経済とは離れるのですが、カナダで1991年に始まった女性に対する暴力を撤廃するための活動が、日本でも始まりました。「ホワイトリボン・キャンペーン」という運動です。男性には「女性に対する暴力」という話題が苦手な方が多いようなのですが、男性の無関心は事件の発生につながります。男性自身が問題意識を持って活動して、社会の変革につなげようという試みです。

女性は正当に評価登用されていない

―― 次の質問です。「女性は活躍していないのではなく、正当な評価と登用が進んでいないのではないでしょうか。女性の役職登用は増えているのですが、例えば若手女性の抜てきや、子育て中の女性に関連する施策が多いように感じます。登用の機会を40代後半や50代の女性に目を向ける考え方はないのでしょうか」

石塚 2つ端的に言うと、(性別を理由に女性にげたを履かせる)「げた問題」に関しては、そもそも今まで男性が優遇され過ぎていたのですから、今もし女性がげたを履かされたとしても、そのチャンスはつかんでもよいのです。遠慮する必要はありません。

 もう1つ、人事評価のところで言うと、今まで日本企業は働いた時間の長さに応じて人を評価する傾向にありました。長時間働いている人が偉いとなると、従来の価値観では家庭責任を重く負わざるを得ない女性に対する評価がどうしても下がってしまっていた。ここを根本的に変えないことには女性の登用は進まないし、変えていくべきです。

 今回の新型コロナウイルスの影響で、テレワークが広く浸透しました。これを機会に、勤務時間の長さによる評価ではなく、純粋に成果で人を評価する制度や仕組みが、日本企業に導入されていくのではないかと思います。これが実現すれば、ここから先、女性の登用はどんどん進むと思います。

―― 「本気で女性活躍推進を考えている男性は少ないのではないですか。登壇しているのも女性ばかりだし……」という質問が来ています。

石塚 私は出身高校がもともと伝統的な女子校の学校だったんです。私が入学したのは男女共学になって数年目で、当時の学校全体の7割が女性でした。成績上位50位ぐらいは全部女性という環境で高校時代を送っていたので、「女性はすごい」という思いが根本にあります。

―― 人生の初期でマイノリティーの体験をお持ちだったのですね。さて、次が最後の質問です。「ジェンダー平等の中には、男性・女性のくくりの中に入らない・入れない人たちが含まれていないと思います。どんなジェンダーであっても平等に活躍できるというのが正しい道だと思いますが、その辺りのお考えを教えてください」

石川 まさにジェンダーというのは男と女というくくりだけではなく、そこに属さない性もあるし、もしくは、性というアイデンティティーを持つこと自体もしたくないという個人の方もいらっしゃるので、その通りだと思います。そういう意味では、今回のコロナに関しても、例えばLGBTQのコミュニティではこの問題をどう受け止めているのかということにもUN Womenでは着目して、研究結果を発表しております。男性、女性というくくり以外のことも示しているという意味合いでも、ジェンダー平等という言葉を使っております。

―― 私どもも、こうして「女性」の部分だけを取り出すことをいつも歯がゆく思っています。女性の支援ではなく、多様性の中でも、とりわけ日本はまだ世界と比べて格差の大きい男女平等のところから進めることで、SDGs17のゴールを解決していけるのではないか。こういった思いで今後とも活動していきたいと思います。

「2021年のジェンダーギャップ指数、日本は121位から上がると確信している方は挙手してください」という呼びかけを受けて……
「2021年のジェンダーギャップ指数、日本は121位から上がると確信している方は挙手してください」という呼びかけを受けて……

※ 石川さん、松田さん、石塚さんをパネリストに迎えたセッションのリポート記事は、これが最終回となります。次回は、カゴメ取締役会長・寺田直行さん、ポーラ代表取締役社長・及川美紀さんの回をリポートします。

構成/小田舞子(日経xwoman編集部) 写真/鈴木愛子

【「日経WEPコンソーシアム」サイトを開設しました】
日本経済新聞社・日経BPは、2020年春に「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト(WEP)」を始動させました。ジェンダー平等は日本の組織の成長に不可欠との信念を持ち、実践しているキーパーソンにインタビューしていきます。さらに、大型イベントの開催、勉強会&ネットワーキング、国連機関のUN WOMENとの連携など、当コンソーシアムで発信していきます。ぜひこちらのサイトをご覧ください。