女性活躍推進のカギは経営側の姿勢

―― では、ここで企業の本音に迫っていきたいと思います。私は企業研修などをしていると、「女性活躍は素晴らしいことですが、推進することで企業には得があるのでしょうか? 女性活躍などして、企業はもうかるのか?」という質問をされることが非常に多いです。

石塚 新聞記者は否定的にものを捉えることが仕事の一つなので、あえて断言しますが、戦略も工夫もなく「女性活躍を推進しよう」「ダイバーシティを追求しよう」と号令をかけるだけでは、企業は絶対にもうかりません。ただし、これには裏があります。だからといって何もやらないと、もうけるチャンスを逃します

 女性活躍を効果的に推進できれば、企業の利益につなげることはできます。要は、経営側がその工夫を怠らず、努力を継続できるかということです。

―― 女性活躍が企業の利益につながることを裏付けるデータはあるのでしょうか。

石塚 女性活躍を推進することによって財務状況がよくなるという、右肩上がりのグラフを見ることは多いと思います。このグラフは、あくまで全社平均で見ると経営状況が改善したことを示します。個々の企業を見れば、大きく上がっている企業もあれば、平均を下回り、女性活躍推進の事業を行っていなかったときよりも下がっている企業もあります。

石塚 一般的にいわれるのは、ダイバーシティを進めると多様な意見が入ることによって、組織の生産性が上がり、アイデアがたくさん湧いてくるということです。しかし、多様な人たちが組織の中に入ってくることにより、コミュニケーションが複雑になり、コミュニケーションミスやグループ間同士のあつれきも生じて、コンフリクトというマイナスの現象が必ず起こります

 これをうまく管理できていない企業は、ここ7年ほど女性活躍を推進してきていても成果につなげることができておらず、女性活躍をこのまま推進していくかどうか迷い始めているというのが現状です。必ず業績に結びついてくるのだと信じて、試行錯誤しながらやり続けることが、企業経営のポイントだと思います。

―― 女性の意見が取り入れられて業績に結びついた事例を教えてください。

石塚 大手損保の事例をご紹介します。若者の自動車離れにより、自動車保険が売れなくなったので新しい商品を考えようとなったときに、女性の企画担当者が1日単位で500円で入ることができる自動車保険「ちょいのり保険」を提案した。それが2012年の発売から契約500万件以上の大ヒットになりました。

 従来型の男性社会だった同社では、それまでは自動車保険は年間契約を前提にしていたためにそこを突破できませんでした。そこに女性が新しい視点を持ち込んで、今までの考え方にこだわらなくてもよいのでは、と発案して成功した。そこが素晴らしいと思います。

 女性活躍に取り組む理由でよく聞くのが、「女性のほうが女性向けの商品を考えるのが得意だよね」という見方です。そうすると女性をターゲットにしていない企業は女性活躍を推進する必要がなくなります。そうではなく、新しい視点を持ち込むことによって、今までのやり方をがらりと変えるイノベーションを起こすというのがポイントです。

―― その企画担当者は、社内で「何を考えているんだ」と言われたでしょうね。

石塚 そうですね。それを受ける側の度量の大きさもあったでしょう。女性が登用されて管理職が増えていますが、私がさまざま取材していると「女は空気を読めない発言をして迷惑だ」「前例を考えてみろ、できるわけがないだろう」という男性の声が聞こえてきます。でもそう言うだけでは、いつまでたってもダイバーシティのプラス効果は生まれてきません。「空気を読めない発言だ」と言って切って捨てるのではなく、「これまでなかった意見だけれど、正しいのかもしれない」と立ち止まって考えるようにしなければいけないのです。

―― 先ほどHeForSheの活動で、女性活躍推進の活動に男性を取り入れるという話が出ました。女性活躍と言いながら、本当は男性側のマインドチェンジが重要だ、ということでしょうか。

松田 「女性が生きやすい社会は、男性にとっても生きやすい社会なんだよ」「女性が活躍することで、男性が所属する組織ももうかるんだよ」という意識が、日本の社会にもどんどん浸透していくとよいなと思います。