―― まさに30%クラブのアプローチと合致するわけですね。

只松 その通りです。少子高齢化が速いスピードで進んでいる日本において、日本企業の持続的成長を可能にするためには多様性の促進が必須であることは誰の目にも明らかです。

 にもかかわらず、多様性の促進が遅々として進まないのは、企業の意思決定機関のガバナンスが機能していないことが根本的な要因だと私は考えていました。同時に、一時的な取り組みやイベント、アワードなどをやったところで、すぐに効果が薄れてしまうことは分かっていたので、持続させるための「仕組み」を構築することが重要だと考えていました。30%クラブのアプローチを聞いたときは「まさにこれだ!」と思いました。

 30%クラブは企業のトップ層の女性割合を向上させることが目的ですが、言い換えるとトップの意識を変え、重要意思決定機関のガバナンス機能を正常化させることを目的とした取り組みということもできます。30%クラブのメンバーは企業のトップに限定されています。加えて、30%クラブは多様性を実現するうえで重要となるさまざまな機関が協業する仕組みでもあります。

 30%クラブの実質的な活動は、さまざまなサブグループによって実行されています。株主の視点から企業の多様性促進を目的とするインベスターグループ、世論形成を目的とするメディアグループ、また、企業のトップ同士で気づきを与え合うTOPIX社長会などのサブグループです。今年は大学のサブグループも本格的に活動を開始する予定です。学生は将来の従業員候補であり、彼らの意見は企業のトップ層も無視できません。

日本でもダイバーシティは必ず実現する。どれだけタイミングを早められるかがポイント

―― ただ日本は多様性という意味ではまだまだ発展途上国です。本当に多様性は実現できるのでしょうか?

只松 私は必ず実現できると思っています。「Z世代」と呼ばれる若年層は、SDGs(持続可能な開発目標)やダイバーシティの重要性を学校で学んできており、ダイバーシティネイティブであるといえるでしょう。この層が管理職に就く頃には日本も大きく変わっているのは間違いありません。ただそれではタイミングとしては遅すぎるので、少しでも早める必要があります。

 私はその点においても楽観視しています。なぜなら、先述した通り、日本は世論が動いたとき、大きくそしてすごい速さで変わることができる国なのです。おそらく動くときは思いもよらないスピードで一気に変化が起こるでしょう。その変化の分岐点がクリティカルマスと呼ばれる30%に達したときです。

 日本国民の30%がダイバーシティの重要性を理解し、現状に疑問を持ち始めたとき、変化が訪れます。現状を見て不安になるのは当然ですが、あきらめずに、私たち一人ひとりが声を上げ続けなくてはなりません。30%クラブ・ジャパンは日本の重要意思決定機関の改革を目標に、今後も更に活動を活発化してまいります。

取材/日経xwoman総編集長・羽生祥子、構成/日経xwoman副編集長・小田舞子、文/阿部祐子 写真/小野さやか

只松美智子(ただまつ・みちこ)
只松美智子(ただまつ・みちこ) デロイト トーマツ コンサルティング ジェンダー・ストラテジー・リーダー。外資系コンサルティングファームを経て2010年入社、ソーシャルインパクトユニット所属。社会課題、特にジェンダーに関わるさまざまな課題解決に向けたコンサルティングサービスを提供している。企業の役員に占める女性比率を3割に引き上げることを目標とした英国発のグローバルキャンペーン「30%クラブ・ジャパン」創設者。

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日本経済新聞社・日経BPは、2020年春に「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト(WEP)」を始動させました。ジェンダー平等は日本の組織の成長に不可欠との信念を持ち、実践しているキーパーソンにインタビューしていきます。さらに、大型イベントの開催、勉強会&ネットワーキング、国連機関のUN WOMENとの連携など、当コンソーシアムで発信していきます。ぜひこちらのサイトをご覧ください。