日本に足りないのは「成長・革新する力」

―― 経営の意思決定や声を吸い上げるコアの部分に多様性がなければ、唯一無二の正解がない現代の課題(新型コロナウイルス)を乗り越えることは困難です。まず日本は、自国のジェンダー平等レベルが先進国の中では最下位レベルだという現実を直視しなければいけません。貴社からご覧になり、日本の企業が今変えるべきことは何かを伺いたいです。

小出 私は40年ほど外資系企業で働いているので、世界から「日本」という国が注目されていることがよく分かっています。そして、世界が日本を果たしてどう言っているのかということに対しても、ずっとアンテナを高くしています。

 海外の人から「日本人の素晴らしさとは何ですか」という質問をされると、私は「日本人は変化に対応する能力が抜きんでています」と答えます。

 例えば、戦後の動乱をいち早く乗り切りましたし、高度成長時代でもエクセレントカンパニーをいくつも生み出しました。リーマン・ショックのときもいち早く金融を立て直しました。このように変化に対応する能力は非常に素晴らしい。チームを組んで、規律正しい動きをするので、混乱もなく対応できます。

 災害時でもそうです。東日本大震災でもあれだけ被害が大きく、大混乱が予想された中で、しっかりと復興の道を歩んでいます。

 しかし、残念ながら、変化を起こす能力に関しては、この20~30年、世界と比べて課題があると思うのです。

 今までと同じやり方でいけば、日本は新型コロナ後の変化にも対応できるでしょう。しかしながら、問題をフィックス(確定)するとか、状況をリカバリー(回復)させるところまでだと思うんです。

 ポストコロナの時代には、グロース(成長)とか、イノベーション(技術革新)に対するビジョンを持たないといけない。問題をフィックスしてリカバリーはできても、その先の成長や技術革新の面で遅れて、世界に後れを取ってしまう。この繰り返しはもう避けたほうがよいでしょう。

 ポストコロナをどう見るか。リカバリーまでを見るのか、その先まで見るのか。ここでいち早く「変革」の方向に持っていける人こそグローバルな経営者でしょう。今までの「変化に対応する能力」を十分生かしながら、「より先の変化を起こす」側を今から準備しておく。それが経営者の役割だろうと思います。

―― 今でも新型コロナウイルスによる実質的な損失幅は、日本は世界でもトップクラスレベルで小さく、そこをコロナ以前に回復させることはできそうに見えます。しかし、確かにその先にグロースの領域まで行けるのか、ということが大事になってきそうですね。

小出 成長や革新に対するアンテナを高くしているのがグローバル企業です。日本企業に変化への対応能力があるのであれば、もうちょっとひねりを加えれば変化を生めるはずです。そちらの方向に目線を変えるといいのではないか。それを実現するためにも、イクオリティやダイバーシティが非常に重要になってくる、私はそう考えています。

小出伸一
セールスフォース・ドットコム会長 兼 社長
小出伸一 1958年、福島県生まれ。大学卒業後、1981年、日本IBMに入社。米国本社戦略部門への出向、社長室長、取締役などを務めたのち、2006年日本テレコム(現在ソフトバンク)に入社し、ソフトバンクテレコム(現ソフトバンク)副社長兼COO(最高執行責任者)に就任。2007年12月、日本ヒューレットパッカード代表取締役社長に就任し、2014年4月、セールスフォース・ドットコム代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)に就任。2018年6月から三菱UFJ銀行・社外取締役、2019年3月から公益財団法人スペシャルオリンピックス日本の理事に就任。

構成/小田舞子(日経xwoman編集部) インタビュー写真/稲垣純也

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