女性社員2000人の前で、唯一の男性として登壇

小出 そのJWCを立ち上げるプロジェクトでは、ダイバーシティを担当していた女性の先輩がリーダーで、私がCo(共同)ーリーダーでした。私が何か言うと、その先輩から「あなたはマイノリティーの立場を経験してないからそういうことを言うのよ」と言われたことが何度もあります。結局、彼女に言われて、社内の女性社員が約2000人集まるダイバーシティに関するイベントに、パネリストとして参加することになったんです。会場の中で男性はほぼ私一人だけでした。

 テーマは確か「日本IBMの中でいかにダイバーシティを推進させるか」というものでした。モデレーターの方がいて、あとは何人か女性のリーダーが登壇していました。私がつい男性目線で発言すると、会場からブーイングとまではいかないのですが、「それは違うでしょう」といったリアクションが発せられて、非常にヘルシーなディスカッションになりました。

 本音を言うと、やはりあの場に立つのは嫌でした。最初は「なんでやらなくてはいけないんだ」と、人生で初めて「今日はできれば休みたい」と思ったイベントでした。でも参加してみて分かったのは、やっぱり男性ばかりの場とは全く違う目線での議論になることでした。女性の意見を採り上げていかなければ日本は世界に立ち遅れてしまうということがよく分かる経験となりました。

 その女性の先輩には、「私は経営会議でいつも女性一人でマイノリティーの気分を味わっているけれど、小出さんは2000人の女性の前でマイノリティーの気持ちを味わえてよかったでしょ」と言われました。確かに女性が2000人集まると、洋服の色からして違うんです。男性は黒か紺のスーツ、女性は花畑のようで雰囲気がまるで違う。あの日、パネリストとして壇上に上がったことで、私は初めてマイノリティーの視点を実感として理解できたと思います。

 こうしたことを繰り返してやっていかなければ、男性経営者はサステナビリティの課題の中でも一番避けて通りたいジェンダーを、これからも避けてしまうのではないかと思います。ぜひ一人でも多くの男性に、私が2000人の女性を前にして登壇したような経験をしてほしいと願っています。

 当時、私はアメリカから帰ってきたばかりでしたし、アメリカではボスが女性でした。普通に女性が会議を仕切る光景も何度も見ていました。しかし、あれから20年以上たった今でさえ、日本ではどうでしょう? ジェンダーの面ではやはり非常に遅れているといって間違いありません。

 女性の登用を増やすと、ある意味ネガティブなインパクトが出ることもあるかもしれません。最初に量を追求するなら追求する。そのあとに、質を追求するという順番でもいいと思います。誰かが意を決して動かない限り、私はダイバーシティやジェンダー、イクオリティというテーマで、現実が前に動いていかないと思うのです。