2022年10月に文部科学省(以下、文科省)が発表した「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」で、21年度の不登校の小・中学生は、前年度比25%増の24万4940人と過去最多にのぼりました。10年前と比較すると、小学生は3.6倍、中学生は1.7倍にまで増え、特に中学生は20人に1人が不登校になっています。前回に引き続き、神奈川県鎌倉市の中高一貫校、栄光学園のカリスマ数学教師であり、「いもいも」を主宰する井本陽久さんにお話を聞きます。子どもが不登校になってしまったら、親はどのように接すればいいでしょうか。学校以外の学びのカタチとは? 不登校児を持つ保護者へのメッセージをお届けします。

不登校は「自分でいられない場所からの緊急避難」

 「いもいも」には、学校に通っていない子も通っている子も、いろんな子が交ざり合って学んでいます。2016年に都内で「いもいも」がスタートすると、夜開講のクラスに学校に通えていない子どもがポツポツと来るようになります。やがて平日の昼間に「森の教室」を開講すると、不登校の子どもたちがたくさん来るようになり、好評なので週2回に増やしました。現在は、スポット的に参加者を募集しても、すぐに枠が埋まってしまうほどの人気クラスです。「不登校の子どもたちが学校以外の学びの場を求めていることを強く実感した」と井本さんは言います。

 友達もいて、学校で特にトラブルもないとしても、不登校になるケースは多いといいます。子どもが学校に行けなくなるのはなぜでしょうか。井本さんは次のように話します。

 「それは心が疲弊しているからです。『先生と子ども』という絶対的主従関係の中で、椅子にじっと座って授業を受けるなんて拷問に近いですよ。『やりたくないのに勉強しなきゃ』『宿題を終わらせなきゃ』『あの子が先生に怒られた。自分もやらないと怒られる』――。常にそんなストレスにさらされているのが今の子どもです。

 しかも、最近の子どもは先を見据えて行動することが求められます。小学4年生で『2分の1成人式』が行われますが、みんなの前で将来の夢を発表させて、先を考えることが立派とされる。学校での人間関係、習い事、目の前にある山積みの勉強と、常にストレスにさらされる子どもは、社会的存在として求められていることがあまりにも多すぎます。しかも、それら一つひとつが将来につながっているという無言のプレッシャーをかけられている。メタ認知力が高く、敏感な子どもほど疲れて不登校になってしまいます

 そのまま学校に行き続けると心が壊れてしまうことを子どもは無意識に察知するから、不登校になったり、学校に行こうとすると体調不良が表れてしまったりする。いわば、自分が自分でいられない場所からの緊急避難です」

「いもいも」を主宰する井本陽久さん
「いもいも」を主宰する井本陽久さん