2022年9月、山奥の野外教室を併せ持つフリースクール「森のスコーレ」が開校しました。代表をつとめる井本陽久さんは神奈川県鎌倉市の中高一貫校、栄光学園の数学教師として27年間のキャリアを持ち、そのユニークな授業をひと目見ようと全国から多くの人が視察に来る名物教師として知られています。現在、都内近郊の小1~中3までの不登校の子どもたちが在籍しています。まずは、開校したばかりの山奥の野外教室「檜原森の教室」について話を聞きました。なぜ、森を学びの場に選んだのでしょうか。不登校児を持つ親へのメッセージとは? 前編と後編にわたりお届けします。

週4日、月12日。自然の中で無計画に遊び倒す

 2022年9月、東京都西多摩郡の檜原村(ひのはらむら)に「檜原森の教室」と題した野外授業など、多様なプログラムを展開するフリースクール「森のスコーレ」が開校しました。代表の井本さんは、栄光学園に数学教師として勤める傍ら、16年には花まる学習会を運営する花まるグループの一事業として、数理思考力の教室「いもいも」をスタート。試行錯誤を重ねるなか、「子どもたちがありのままに輝くこと」を主眼とした授業内容へと変化させてきました。

 「森のスコーレ」は、そんな「いもいも」が、野外体験を軸とした「檜原森の教室」をはじめとする、多彩な授業を自由に選択し受講できるフリースクールです。まずは、開校したばかりの「檜原森の教室」の活動から、話を聞きました。

 「檜原森の教室」は、都心から車で2時間ほどの山村で開講されるプログラムです。ここには時間割もカリキュラムも校舎すらもありません。檜原村の最奥に位置する数馬(かずま)周辺の豊かな自然を教室として、最大で月曜から木曜までの週4日間×3週間を子どもたちは野外で過ごします。現在、同教室に参加するのは、小学2年生から中学2年生までの15人。その多くは学校に通っていない、いわゆる不登校の子どもたちです。

 檜原村に都心から毎日通うのは大変です。週1日ほどの頻度で参加する子もいれば、家族で檜原村近くに移住してきた子もいるそうです。なぜこのような場所を選んだのでしょうか。

 「僕自身が1年半ほど前から檜原村に住んでいて、最高の自然に魅せられてきたからです。当初、武蔵野エリアに開校する予定でしたが、説明会の直前に山々の尾根を歩いているとき、この自然を体験してもらうことに深い意味と大きな価値があることに気づいてしまって、直前で変更しました」と井本さんは説明します。

 「森の教室」には決められたプログラムがありません。1日中、山歩きをする日もあれば河原で遊ぶ日もあり、子どもたちの様子を見ながらさまざまな活動がフレキシブルに取り入れられていきます。川で魚を探す子もいれば、じっと苔(こけ)を観察する子、火を起こそうと試行錯誤する子もいます。

 「大人は子どもたちに何かを教えようとすることはなく、子どもたちが個々の興味関心に基づいて自由に活動し、試行錯誤するのを見守ります。もちろん野外なので危険はありますが、自然が持つ危険さを子どもたちが意識できるようになることで、穏やかで落ち着いた時間を過ごすことができるようにもなります。

 教育学者の汐見稔幸さんとお話しをした際、『自然は人間の本能を呼び覚ます』『人間はどういう生き物なのかを考えるのが大切』とおっしゃって、その言葉をきっかけに、自然と子どもたちの関わりについて、日々試行錯誤しながら活動するようになりました。子どもたちには、クタクタになるまで森の中で『生き物』として動き回ってほしいですね」

「檜原森の教室」の様子。森の中での遊びを通して好奇心がかき立てられ、想像力も育まれる 左の写真/土屋 敦
「檜原森の教室」の様子。森の中での遊びを通して好奇心がかき立てられ、想像力も育まれる 左の写真/土屋 敦
「檜原森の教室」の様子。森の中での遊びを通して好奇心がかき立てられ、想像力も育まれる 左の写真/土屋 敦
「檜原森の教室」の様子。森の中での遊びを通して好奇心がかき立てられ、想像力も育まれる 左の写真/土屋 敦

次ページから読める内容

  • 「いもいも」の先生は「子どもに会わせたいな」と思う人
  • 不登校児とそうでない子が交ざり合って学ぶ
  • 子どもたちの発想力がさえる「表現コミュニケーション」

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