ゲームの時間は制限したほうがいい?

:子どもが好きなことを後押しするのがいいのなら、「YouTube」はどうですか。子どもならみんなそうですが、うちの娘はYouTubeが大好きで、放っておくとずっと見ようとします。動画をぼーっと見ているようで、そこから新しい言葉を覚えたりもしているようです。

:小学生にとってはYouTuberが憧れの職業になっているそうですね。YouTubeをきっかけにいろんな情報に触れて、新しい世界を知ることも実際にあります。ギター、サッカーなど、楽器やスポーツの練習動画も充実していて、英語など語学の勉強にも使えますよね。ただ、YouTubeなどのネットサービスは、ゲームなどと同様、「依存症」に気を付けなければならないと考えています。

:「依存症」って、アルコールとかと同じですか?

:その通りです。自分が好きだからネットやゲームを続けるのではなく、「中毒になってやめられない」から続けてしまうんです。WHO(世界保健機関)は、ゲーム症(ゲーム障害)の判定基準を以下のように定めています。

ゲーム症(ゲーム障害)の判定基準

以下のような状態が12カ月続く場合

・ゲームをする衝動が止められない
・ゲームを最優先してしまう
・何か問題が起きてもゲームを続けてしまう
・個人、家族、社会、学習、仕事などに重大な問題が生じている

:これが12カ月続く場合、病気とみなされるんですね。新作ゲーム発売後、1週間だけ集中してゲームをやるみたいなのはセーフなんですね(笑)。

:そうです(笑)。ただ、幼少期は脳のネットワークが柔軟に変化するので、大人と比べて依存症の進行が速く、すべての症状に当てはまり、かつ重症なら、子どもは短期間でもゲーム症とみなすようになっています。「ゲームのプレー時間が長いほど脳発達が遅れる可能性がある」という研究(*7)もあります。

:ええ! 子どもに人気の「マインクラフト」なんて、めちゃくちゃ頭使うし、プログラミングっぽいこともできるので、娘にやらせてあげたいと思っているんですけど。

:もちろん、ゲームによって脳のある領域が鍛えられることはあると思います。ただ、「やり過ぎ」は脳の成長にとってマイナスな影響が増えてしまうんですね。1日2時間とか、夜何時まで、みたいなルールを決めることをお勧めします。

*7 Takeuchi H. et al, Molecular Psychiatry, 21:1781-1789., 2016

高校生の3割強は1日5時間スマホを使う

:個人的にはデジタル技術がこれだけ進化したんだから、その流れに逆らわずツールを使いこなせるようになってほしいと思っていたんですが、子どもが小さいうちは依存症にならないよう、使用時間を制限したほうがいいということでしょうか。

:そうなんです。ネットについてもゲームと同じで、LINE、Instagram、Twitter、TikTokのようなSNS にハマってしまって四六時中見ている状態も、やはりWHO が疾病として認定しています。令和2年度(2020年度)「青少年のインターネット利用環境実態調査」(内閣府)によると、10~17歳の青少年のインターネット利用時間は1日平均3時間25分、高校生の3割強(35.9%)が5時間以上使っているそうです。使用時間は年々増加しています。

:1日5時間も!  

:チャットやSNSにハマっている子どもたちは本当に幸せを感じているのかというと、実はそうではなく、「SNSの利用頻度が高い子どもほど、自己肯定感が低く、孤独感を抱えている」という研究もあります(*8)。

:なるほど。県の条例などでゲーム時間を制限することには「違うんじゃないか」と思っていましたが、自分の子どもが依存症になっていないか、ちゃんと見守らないといけないですね。

:私もそう思います。子どもが自己管理できるようになるまでは、ゲームやスマホなどの使い方について「ルール」を親と子どもで相談して決めるのがお勧めです。

*8 Liu D. et al. Journal of Research in Personality, 64:79-89., 2016
瀧靖之 東北大学教授・著
瀧靖之 東北大学教授・著

イメージ写真/PIXTA

子ども4人を東大理IIIに合格させた佐藤亮子ママ推薦!

猛スピードで環境が変化する現在、「スキルより地頭が重要」と考えられるようになってきました。

この地頭は、「持って生まれたもの」であり、後から鍛えたり伸ばしたりする余地はあまりないと思っている人も多いでしょうが、東北大学教授の瀧靖之さんはそれを否定します。成長期にある子どもだけでなく、中高年のビジネスパーソンでも、脳に適切な刺激を与えれば能力が伸びると言います。

最新の脳科学の成果を基に「地頭を伸ばす方法」を具体的に解説したのが『脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい』です。

・子どもを賢くする声掛けは「勉強しなさい」より「好きなことをしなさい
・「結果」を褒めるのより「努力」を褒めたほうが学力は伸びる
・東大生は勉強以外のスポーツや音楽、ゲームなどに熱中した体験を持つ人が多い
・「中高年になると脳の能力は衰える一方」というのは間違い

子どもはもちろん大人にも効く「脳の基礎力UP法」を一挙に紹介した一冊!