:無理に勉強させて、「勉強とはつらいこと、言われてやること」って子どもが思うようになるのは避けたいですし、「親や先生の言うことに従うのが良い子だ」って勘違いされるのも怖いなって思っています。

:100%同意します。それに、「勉強しなさい」と言うよりも、「好きなことをやりなさい」と子どもの興味・関心を後押しするほうが、脳の力を伸ばす上ではプラスになるんじゃないかと思っています。

 雑誌の「プレジデントFamily」2016秋号で「東大生174人の小学生時代」という特集があったのですが、その中で東大生が小学生時代に親からかけられていた言葉がまとめられていました。そこでは「何でも好きなことをやっていいよ」「勉強は好きなときにしなさい」「自分の人生なんだから自分で決めていい。サポートするから」といった言葉が紹介されていました。

:それはいいですね! 早速使ってみます。

塾の成績が低かった子どもに勉強以外のことをやらせてみた

:「好きなことをやりなさい」と言って、勉強以外のことに熱中したら成績が落ちるんじゃないかと思うかもしれませんが、「子どもの幅広い趣味活動が学業成績に良い影響を与える」ことが明らかになった研究もあります(*4)。これはスポーツの世界でも同じで、「超一流の選手はその種目に絞り込むタイミングが遅く、実はいろんなスポーツを経験している」というデータ(*5)があるんです。テニスの錦織圭選手なんてまさにそうだったみたいですね。

:「回り道」しているようで、その経験が後々役に立つということですね。

──あの、横から失礼します。私(編集部T)は以前、自分の小学生の子どもが塾であまりにも成績が低かったのですが、瀧先生から「子どもが好きなことを後押しするのが脳にとって良い」と聞いて、それを実践してみたんです。

:ほほう。どうなりました?

──結果として子どもが興味を持った2つのことについて、できるだけやらせてみました。1つは自転車です。新しい自転車を買ったらハマって、休日は片道10kmも遠出するようになりました。もう1つはサッカー観戦です。Jリーグのチームをスタジアムで応援するようになって、選手名鑑を買ったら、選手の過去の成績まで暗記するほどハマってます。

:見事に勉強とは関係ないじゃないですか(笑)。

──それが、数カ月たって、塾の成績が伸びてきたんです。自信を持ったのか積極的になって、今では塾が楽しいと言っています。

:それはよかったです。もちろん成績が伸びたのは本人が努力したからでしょうが、興味を持ったことに能動的にチャレンジしたり、自分からどんどん調べて突き詰めていったりする経験をすると、それが勉強にも応用できるのでしょうね。

:なるほど。

:子どもが好奇心を持てるように、親が環境をつくることが重要なんです。きっかけづくりとしてお勧めなのは、子ども向けの図鑑や百科事典、歴史などの学習マンガ、そして親が自分の趣味を楽しんでいる姿を見せることなどですね。それで子どもが興味を持ったら、アウトドアや動物園、博物館、コンサートなどに連れて行って、リアルな体験をさせる。すると、脳に刺激が強く入って、知的好奇心が喚起されます。

:親がハマっている趣味を一緒にやるのでもいいんですね。

:人間の脳には「ミラーニューロンシステム」と呼ばれる機能があります。ほかの人の動作を目にしたときに、その情報がミラーニューロンシステムに送られると、少し時間を置いた後でもちゃんと記憶していて、模倣できるんです。「生後12カ月の乳児にある動作を見せてあげたら、4週間たった後でもその動作の模倣ができた」という研究(*6)があります。子どもは模倣で育つので、親が夢中になっていることを自分もやりたいと思うようになるのは自然なことです。

*4 Bergin D.A. Journal of Leisure Research, 24(3):225-239., 1992
*5 Moesch K. et al., Talent Development and Excellence, 5(2):85-100., 2013
*6 Klein P.J. et al., Developmental Science, 2(1): 102-113., 1999