子どもの脳の発達に詳しい東北大学教授の瀧靖之さんは、「子ども時代は脳のネットワークが柔軟に変化する時期なので、ゲームやネットの依存症に気を付けたほうがいい」とも指摘します。一方で、デジタル機器の使いようによっては、子どもの脳の成長を促すきっかけにもなると言います。『脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい』(日経BP)の著者である瀧さんに、子どものゲームやネットとの付き合い方を聞きました(聞き手はライター郷 和貴さん/日経Goodayからの転載記事)

「学力主義」を無理に否定しなくてもいい

郷和貴さん(以下、郷):私は4歳になる娘がいるのですが、どんな教育を受けさせればいいのか悩ましいです。「勉強しなさい」とばかりうるさく言う親にはなりたくないですが、これからの世の中、英語はますます必要だし、AIがもっと普及すれば数学もできたほうがいいですよね。

瀧靖之さん(以下、瀧):親なら誰もが持つ悩みですよ。勉強に関しては、「学力主義」を無理に否定しなくてもいいと思います。「学力が高いと進路選択がしやすくなり、社会的な成功につながる」という研究結果(*1)がありますし、「学力の高さが自尊感情(自己肯定感)や健康にもつながる」というデータ(*2)もあります。

:中国や韓国には教育熱心な親が多く、小さいときから猛烈に勉強させるなんて聞きますけど、子どもの幸せのためには、そこまでやらせてでも学力を伸ばしたほうがいいということですか?

:子どもが自分からそれを楽しんでいるならいいと思います。そうでなければ、無理にやらせる必要はありません。

:それを聞いて安心しました。実は、小学校受験専門の塾に娘を通わせていたんですけど、「全然楽しくない」と言い出したのでやめさせたんです……。

:焦らなくていいですよ。ある研究では、「早期教育を受けた子どもでも小学校の高学年くらいになると、早期教育がIQ(知能)に与えた影響が薄れていく」という研究結果(*3)があります。もちろん、早期教育によってその子の才能が開花する場合もあるでしょうが。

*1 Shapka J.D. et al., Educational Research and Evaluation, 12(4): 347-358., 2006
*2 Ray C.E. et al., School Psychology Review, 35(3): 493-501., 2006
*3 Bailey D. et al., Journal of Research on Educational Effectiveness, 10(1): 7-39., 2017
<span class="fontBold">瀧靖之(たき・やすゆき)</span><br />東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センターおよび加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 教授<br />医師。医学博士。東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人に上る。10万部を超えたベストセラー『生涯健康脳』(ソレイユ出版)、『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(青春出版社)など著書多数。
瀧靖之(たき・やすゆき)
東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センターおよび加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 教授
医師。医学博士。東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人に上る。10万部を超えたベストセラー『生涯健康脳』(ソレイユ出版)、『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(青春出版社)など著書多数。