地頭は「持って生まれたもの」であり、あとから鍛えたり伸ばしたりする余地はあまりないと思っている人は多いかもしれません。しかし、東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之さんはそれを否定します。最新の脳科学の成果を基に「地頭を伸ばす方法」を具体的に解説した書籍『脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい』(日経BP)著者の瀧さんに、子どもでも大人でも脳を成長させることができる理由を聞きました。(聞き手はライター郷 和貴さん/日経Goodayからの転載記事)

コロナ下で加速する「スキルより地頭」

── 世間では「地頭」が注目されています。新型コロナのような感染症によって社会のあり方が大きく変わるなど、変化の激しい時代には「スキルよりも、頼れるのは地頭」なのかもしれません。

郷和貴さん(以下、郷):よく分かります。私は4歳の娘がいるのですが、彼女が成人する頃にはどんな社会になっているのか全く想像もつかない。どんな教育を受けさせればいいのか悩んでいる親は多いと思います。

瀧靖之さん(以下、瀧):地頭というと、「その人が持っている本質的な頭の良さ」というような意味で使われることが多いですよね。

:はい。ただ、親がいくら何かやったところで子どもの地頭を良くすることなんてできないのではないかと思って、モヤモヤしてしまうんですよね。

── 地頭は持って生まれたもので、あとから伸ばす余地はほとんどないのではという意見もあるようです。

:そう思う人もいるかもしれませんが、「脳の能力は伸ばせない」と考えるのは間違いですよ。例えば、IQだって約50%が後天的なもので決まるという研究があります(*1)。つまり、努力すればIQだって伸ばせる余地がちゃんとあるわけです。

*1 Bouchard T.J. et al., Science, 212(4498):1055-9., 1981
<span class="fontBold">瀧靖之(たき・やすゆき)</span><br />東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センターおよび加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 教授<br />医師。医学博士。東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人に上る。10万部を超えたベストセラー『生涯健康脳』(ソレイユ出版)、『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(青春出版社)など著書多数。
瀧靖之(たき・やすゆき)
東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センターおよび加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 教授
医師。医学博士。東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人に上る。10万部を超えたベストセラー『生涯健康脳』(ソレイユ出版)、『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(青春出版社)など著書多数。