「ギフテッドチルドレン」(才能児)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ある特定の分野に対して、ずばぬけた才能がある子どものことで、来年度から文部科学省が支援に乗り出すことになったことからも、関心が高まっています。そこで、国内外のギフテッドの教育について研究し、教育支援プログラムを開発・実践している、愛媛大学教育学部の隅田学さんに日本の才能児が置かれている環境や望まれる関わり方について話を聞きました。

学問分野に限らず、何かしらの側面が突出している子を呼ぶ

 子どもがギフテッドチルドレン(以下、ギフテッド)かどうか見極めるには何か基準があるのでしょうか。

 隅田さんは「かつてはIQ130あたりをひとつの目安にしていました。しかし最近では、より多面的に評価する流れに変わってきています」と説明します。

 「現時点ではギフテッドは、同じような年齢、経験、環境の子どもに比べ、何かしらの側面で突出している子と考えるのが分かりやすいでしょう。発達障害の子の中にも特定の分野において飛び抜けた才能を持つ子がいます。

 ギフテッドというと、100年に一度、世界を変えるような天才をイメージする人が多いでしょう。しかし、決してそうではありません。米国で公表されているギフテッドの割合は、公立学校で約6%というデータがあります。私立校を入れるともう少し高くなるかもしれません。意外と多いと思いませんか」

 日本でも米国と大きな差はなく、各種国際教育調査の結果などから考えるとさらに高い可能性も十分にあると隅田さんは話します。

 「以前、私は理系の優れた行動特徴を判定する才能行動チェックリストを作り、松山市のランダムに選んだ公立小学校8校の3~6年生合計86人を調べました。その際は、理科に関する才能児の傾向があるであろう子は10%弱いました。30人学級だったら2~3人はいる割合です。そこには、軽度の発達障害傾向を持つ子も含まれます。

 米国では公立学校でもギフテッドに特別な教育を提供しています。ところが、日本ではそのままになっています。米国の6%を日本の小・中・高の公立学校にあてはめると、才能児と考えられる人数は70万人弱です。米国なら特別な教育を提供される子が日本には70万人弱いる。そこに日本における才能児支援教育の問題があります」