子どもと一緒のハイキングや、自然体験などのフィールドワークなどの計画を立てている人もいるかもしれません。そこで気を付けたいのは、毒虫による「虫刺され」です。特に気を付けたい、マダニ、ヒアリ、ハチ、ブヨの4種類の毒虫に刺された場合のリスクと、それらから子どもを守る対策について、皮膚科医で神奈川県立こども医療センター皮膚科部長の馬場直子さんに聞きました(DUAL特選シリーズ/2021年10月18日記事の再公開)。

マダニ・ヒアリにかまれたらどうなる

 都会でもマダニにかまれる被害が増えてきています。マダニは、野生動物の血を吸うため野山や森林などの草が茂った場所に生息していますが、野生生物はエサを求めて都会に降りてくるなどで生息範囲を拡大しています。野生動物が都会に出没すると同時にマダニの生息範囲が広がっているのです。自然公園や河川敷などでもマダニが発見されており、都会だからといって、安心できなくなっています。

 「マダニは草の上などにいて、人間が通りかかると、足などに飛びついて、はい上がり、そけい部やひざ裏、脇の下など皮膚のやわらかい部位にかみつきます。木から落ちてきて、頭皮にかみつくこともあります。マダニは、鉤状の口器を持ち、それを皮膚に食い込ませて、数日から1週間ほどかけて吸血します。体長は2~3ミリですが、吸血すると1~2センチまで大きくなります。かまれても痛みなどはないため、体が大きくなって初めて気づき、『ほくろができた』『ボタンみたいなものが付いている』と来院する人も多いです」と馬場さんは言います。

 マダニにかまれたらどうすればいいのでしょうか。

ゴマ粒くらいの大きさのマダニは、血を吸うとほくろやボタンくらいの大きさになる
ゴマ粒くらいの大きさのマダニは、血を吸うとほくろやボタンくらいの大きさになる

 「マダニにかまれたことに気づいたときは、慌てて取ろうしないこと」と、馬場さんは注意を促します。「マダニの口器が取れて、皮膚の中に残ってしまいます。必ず皮膚科を受診し、専用の器具で取ってもらいましょう」

 マダニにかまれたり、吸血されたりすることによって一番気を付けたいのは、マダニがウイルスを媒介することによって発症する感染症です。「ウイルスを保有しているマダニにかまれることで、感染症を発症することがあります。特に注意したいのは、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)です。発熱とともに嘔吐(おうと)、下痢、腹痛などの消化器系の症状が表れます。重症化すると死に至ることも。6~14日程度の潜伏期間があるので、マダニにかまれたら、1~2週間は様子を見ましょう」

 マダニがウイルスを媒介する感染症には、SFTSのほかに、倦怠(けんたい)感や発熱を伴うライム病、リケッチアという病原体が移ることによってかかるリケッチア感染症があります。この感染症にはツツガムシ病、発疹チフスなど多くの種類があります。

 危険な特定外来生物として話題になっているヒアリはどうでしょうか。