サントリーホールディングスで正社員として働きながら、自らが立ち上げた一坪茶園代表として複業を営む脇奈津子さん。本業でさまざまな経験を積む中で抱いた、お茶の新たな需要を世界中に創造するという目標を複業で追求しています。家庭では、ワンオペに近い家事・育児を体力と気力でカバーしながら、現在中2になる一人息子を育ててきました。複業を立ち上げ、世界を目指すようになった経緯を聞いた前編に続き、後編では小学校受験や中学校受験の断念を経て、海外へのラグビー留学を目指している息子の子育てについて聞きました。

前編 複業で日本茶文化を世界へ フルタイムママの挑戦
後編 中学受験「途中撤退」機にレールを敷かない子育てへ ←今回はココ

小学受験の失敗。公立小で知った環境の大切さ

 新卒で入社したサントリーで営業トップとして活躍した脇奈津子さん。サントリーのラグビー選手として活躍していた夫と社内結婚し、29歳で長男を出産しました。共働きで試行錯誤の子育てでしたが、小学校受験への挑戦経験がその後の子育ての視点を変えることになります。

 「今でこそ親がレールを敷かないという、自分なりの子育ての軸が明確にありますが、子どもが小さいときは周りに流されてしまっていた部分もありました。『小学校受験をさせたほうが環境も整っていて、子どもの将来のために安心』という周囲の声に、そういうものなんだと思ってしまったんですね」

 忙しい仕事をやりくりして小学校受験の教室に2年間通い、送迎にはベビーシッターも頼むほどでした。国立を中心に何校か受けましたが、結果は全滅。

 「よくよく考えてみると、息子は私に似てはっきりものをいう性格。協調性が重視される小学校受験には全然向かないタイプなので、当然の結果でしたね(笑)。不安な気持ちで公立小学校に進みましたが、楽しそうに過ごす息子の姿に、公立に通うことの素晴らしさを感じるようになりました」と当時を振り返ります。

 「小学生の子どもにとって、近所に友達がいることは何よりも大切なこと。放課後、友達と家を行き来したり、近くの公園で遊んだりすることが子ども時代を豊かにしてくれました。ママ友を始め、地域の人たちが見守ってくれているので、子どもにとってたくさんの斜めの関係をつくってあげることもできました。そういう公立ならではの環境には『ああ、ありがたいな~』と思うことばかりでしたね」

 公立小学校での子育て環境に満足しながらも、小学校4年生からは中学受験を見据えた塾通いをスタートさせました。

サントリーホールディングスで投資案件などを含む新規事業開発を手がける脇奈津子さん。複業では一坪茶園代表としてお茶の新たな需要を世界中に創造しようとしている
サントリーホールディングスで投資案件などを含む新規事業開発を手がける脇奈津子さん。複業では一坪茶園代表としてお茶の新たな需要を世界中に創造しようとしている