働き方改革と副業解禁の流れで、一気に身近になりつつある副業・複業。コロナ下によるリモートワークの定着とともに関心を持つ人も増えています。そんな中、自分のやりたいことを複業で実現しているのが、中学2年生の男の子のママで、サントリーホールディングス未来事業開発部に所属する脇奈津子さん。複業で日本茶を扱う事業「一坪茶園」を立ち上げ、お茶の新たな需要を世界中に創造しようとしています。複業と本業、子育てのバランスをどのように取っているか、前後編で聞いていきます。

前編 複業で日本茶文化を世界へ フルタイムママの挑戦 ←今回はココ
後編 中学受験「途中撤退」機にレールを敷かない子育てへ

作る人、飲む人の思いをつなげて、日本茶の未来を創る

 サントリーで投資案件などを含む新規事業開発を手がける脇奈津子さんは、2019年に個人で立ち上げた一坪茶園を2021年7月に法人化。本業と複業、育児のバランスをうまく取りながら、自分のやりたいことを追求しています。

 一坪茶園は、お茶農家や茶商と、消費者の思いをつなぐ存在として立ち上げた事業です。お茶を作る人、飲む人の思いをつなぎ、お茶を飲むだけでなく、産地での農業体験を提供したりするなど、お茶にまつわるさまざまな世界を広げていこうというものです。

 オリジナルで開発したティーバッグは、ボトルにポンと入れるだけ。水があれば誰でも、おいしくお茶を味わえます。オンラインショップで販売するほか、スノーピーク、リッツ・カールトン東京などとも提携。「お茶の未来を創る」というコンセプトも多くの共感を呼んでいます。

 「私が一坪茶園を立ち上げようと思ったのは、サントリーの原料調達部門にいたときにお茶農家さんと直接やり取りする中で、日本のお茶農家の現状を知ったことがきっかけです

 現在、日本茶の生産はほぼ半数がペットボトルの原料で、残りが急須でいれて飲まれる茶葉として流通しています。しかし、急須に茶葉をいれて飲むという習慣はどんどん減っていますよね。茶葉農家さんの収入の7割を占める一番茶の単価はこの10年で約半分に。生産すればするほど利益が出ない、ひどいときは赤字というような状況が続いています。もうからない茶葉農家を継ぐ人も減っています。このままだと、ペットボトルでは味わえない上質なお茶のおいしさを知っている人がどんどん少なくなってしまいます。

 日本茶の文化が衰退していくなんていやだ。何より自分がそれでは困る! だからこそ、お茶農家が継続して茶業を続けていけるように何か自分が動けることはないだろうかと思いました」

一坪茶園代表の脇奈津子さん。静岡県掛川市のお茶の卸会社・丸山製茶とその先にいる生産者であるお茶農家と契約。一坪茶園ならではの知見を活かして、商品を開発。掛川市とも協力し、農業体験、お茶畑体験などさまざまなアイデアを実現していくつもりだと話す
一坪茶園代表の脇奈津子さん。静岡県掛川市のお茶の卸会社・丸山製茶とその先にいる生産者であるお茶農家と契約。一坪茶園ならではの知見を活かして、商品を開発。掛川市とも協力し、農業体験、お茶畑体験などさまざまなアイデアを実現していくつもりだと話す