赤ちゃんとママが一緒に横に寝たまま授乳する、添い乳。夜中に起き上がって赤ちゃんを抱っこしての授乳に比べ、ママが体を休ませられるといった便利さがあります。一方で、赤ちゃんを窒息させてしまう危険性もはらんでいます。では、安全に添い乳をするにはどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。看護師、助産師で、「すみれ出張専門助産院」を開業している坂田陽子さんに聞きました。

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添い乳のメリットとリスクとは

 「添い乳には、お母さんへのメリットがたくさんあります」と、新生児のいる家庭に訪問アドバイスをしている看護師・助産師の坂田さんは言います。

 「出産後、1日中育児をしているなかで、夜中も起き上がって授乳することは、ママの体に大きな負担となります。自然分娩でも帝王切開でも痛みがありますし、腰痛や腕の痛みがあるなど、疲れやすい状況が続いているでしょう。そんな中、夜中の授乳でさらに疲れがたまることで、産後うつにつながる可能性もあります。添い乳は、少しでもママの心身を楽にできる手段になりますし、さらに、赤ちゃんがお乳を飲んだ後に安心して寝やすいというメリットもあると思います」

 ママが楽になる添い乳ですが、危険性についても知っておく必要があります。1歳未満の家庭内の子どもの事故では、転落や窒息が挙げられます。0歳児では、窒息や誤飲の原因となった事故のうち、ミルクは4位でした(1位は包み・袋、2位はたばこ、3位はその他玩具、5位は薬剤等。平成30年東京消防庁「STOP!子どもの事故」より)。

 子どもの死亡例を検証して再発防止につなげる取り組み「チャイルド・デス・レビュー(CDR)」が、厚生労働省や都道府県を中心に始まっています。滋賀県の、2018~2020年の間に亡くなった18歳未満の子どもを対象にした調査では、予防できた可能性のある子どもの死因のうち約3割が「不慮の窒息」。その中には添い乳も含まれていました。

 「添い乳によって、赤ちゃんが寝ながら吐き戻しをすることで、吐物による窒息を起こす危険性があります。本来、授乳後にはげっぷをさせてあげることが望ましいですが、添い乳ではそのまま寝かせてしまうことが多いからです。また、ママと隣に寝ていることで、ママが覆いかぶさったり、大人の掛け布団がかかったりし、赤ちゃんの鼻や口がふさがれてしまうことに注意が必要です。

 現在、国としては添い乳を特に禁止しておらず、一般的な病院や産院では、『赤ちゃんの安全を十分配慮したうえで』と注意を促したうえで、出産時に添い乳の方法を教えてくれるケースが多いと思います。ただ、リスクもあるため、一部の病院では、禁止の方針を出しているところもあるようです」

 次のページから、赤ちゃんの安全を守って添い乳をするポイントを解説します。