2021年6月に「改正育児・介護休業法」が衆議院本会議で可決、成立しました。男性の育休取得を促進する大きな一歩です。しかし、男性が育休を取りやすくなったからといって、初めての育児がスムーズにスタートするものではありません。「何をしたらいいのか分からず夫はオロオロ。妻はイライラ」ということもあるでしょう。そこで、東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 チーフコンサルタントの塚越学さんに、男性育休義務化に伴って広めるべき、新たな両親学級のスタイルについて話を聞きました。後編では、新スタイルの両親学級のルポをお送りします。

前編 男性の「取るだけ育休」予防する新タイプの両親学級 ←今回はココ
後編 仕事より育児が大変な理由を分析 企業内両親学級ルポ

今回の改正内容を分かりやすく解説。この記事もチェック!
■男性育休の法改正は職場と夫婦のターニングポイント

男性育休とセットで提供すべき「企業内両親学級」とは?

 今年6月の法改正では「男性育休が義務化」となりました。この「義務化」は企業への義務。社員の男女を問わず、出産を控えた労働者には「育休が取れますがどうしますか?」と取得の意思を確認しなければならないという意味です。これによって男性の育休取得率がアップする可能性が高まりました。

 それはいいのですが、中には、男性の家事の経験が乏しいために、せっかくの育休を生かせないのではという懸念の声も聞かれます。いわゆる「取るだけ育休」です。

 休暇は取ったけれど何をしたらよいのか分からず主体的に動けなかったり、スキルが足りず戦力にならなかったり。その結果、産後間もない妻が家事をすることになったり、夫婦一緒に育児をスタートする実感を持てなかったりします。これでは、育休取得の目的を達することはできません。しかしその背景には、これまで男性が家事・育児を学ぶ場がほとんどなかったということがあります。塚越さんはその解決策として「企業内両親学級」の開催を挙げます

 これは、最近増えている新しいタイプの両親学級。これまで両親学級というと産院や自治体で行われていますが、企業が開催するものが企業内両親学級です。塚越さん自身も企業や厚生労働省が開催する両親学級の講師として活躍しています。

 産院や自治体では以前から母親学級や両親学級が開催されています、どのような違いがあるのでしょうか。

 「産院や自治体主催の母親学級や両親学級は、助産師や保健師が講師となり、妊娠中の身体の変化、出産までの経緯など産前情報、沐浴(もくよく)やオムツ替えなど、新生児に関する情報を提供することがほとんどです。しかし、最近は共働き世帯の増加で、育児に主体的に関わる男性が増えています。職場復帰をする妻と交代で育休を取ることもあるので、その情報だけでは足りません。企業内両親学級では産後に必要となる家事・育児のノウハウや夫婦のコミュニケーションの取り方、子育てとキャリアの在り方、仕事との両立の秘訣などを学びます

 もちろん従来型の母親学級・両親学級の内容も大切です。塚越さんは「産院、自治体、企業でコンテンツをすみ分けていくとよいのでは」と提案します。

 塚越さんによると、共働き時代に即した企業内両親学級は企業と従業員の双方にメリットがあるそうです。