「笑い」は今後の教育において重要なキーワードに

 これらのプログラムはすべて木曽さんが毎回自分で用意しますが、東京理科大学 教育支援機構 教職教育センターの井藤元准教授のアドバイスを基に組み立てていると言います。井藤准教授は、シュタイナー教育が専門ですが、同大学の教職課程に漫才作りに挑戦する新しい科目を設置するなど、笑いを取り入れた教育の研究にも積極的に取り組んでいます。木曽さんも、21年から東京理科大学のオープンカレッジで社会人に向けたお笑いの技法を用いたプレゼン力やコミュニケーション力アップのための講座も担当しています。

 「お笑い芸人には自分の笑いへの美学を突き詰める人のほうが多く、教育分野で真剣に取り組んでいる人はまだ少ないと思います。でも、すごくやりがいを感じます。例えば、学校への出張授業などで、最初の印象はどちらかというとあまり明るくない子が、大喜利でものすごくオモシロイことを言って爆笑を取ったりする。普段目立たない子がクリエーティブな部分を評価されてうれしそうにしているところを見ると、すごく燃えます(笑)」

 転校続きで幼い頃は人見知りだったという木曽さん。ですが、お笑い好きが高じて舞台に立って人前でしゃべるようになり、周囲の人が笑ってくれたことで「人を笑わせる」ことが病みつきになってしまったと言います。

 「このワークショップを経験することで、少しでも人の前で話すことへの苦手意識を取り払ってもらいたい」(木曽さん)

 「周りを幸せにする笑い」を作るには、おのずと想像力や共感力が養われます。自己満足に終わらないコミュニケーション力やプレゼンテーション能力を身に付け、非認知能力まで育てられる「笑い」は今後の教育においてキーワードになりそうです。

取材・文・写真/北川聖恵