「今の子どもたちが大人になる頃には、宇宙に関わることは当たり前になるでしょう」。こんなワクワクする話をしてくれたのは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の内山崇さんです。内山さんは2008年の宇宙飛行士選抜試験に応募。963人中10人のファイナリストに残りました。その後は宇宙船「こうのとり」の地上管制官として、実績を積んでいます。宇宙が身近な時代を生きていく子どもたちに伝えたいことを聞きました。
(DUAL特選シリーズ/2021年7月14日収録記事の再掲載。記事中の所属・役職・肩書等は取材した時点のもの)
13年ぶりの宇宙飛行士募集。間口が広がった理由は?
昨年秋、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2021年秋ごろに宇宙飛行士の募集を開始すると発表しました。日本の宇宙飛行士募集は2008年以来13年ぶりで6回目となります。今回の募集で注目されているのは、採用・選抜・訓練において、民間企業のノウハウや新しいアイデアを活用するパブリックコメントを行ったことです。
内山さんが応募した2008年の応募条件では、学歴が自然科学系の大学卒業以上であることや、自然科学系分野における研究などに3年以上の実務経験を有すること、一定以上の泳力や英語力があることといったさまざまな項目が挙げられていました。ファイナリストになった内山さん自身も「すべてに自信を持って応募できた人は少なかったのでは」と振り返ります。
一方、今回の募集では、学歴を理系学部出身に限らないことが検討されているなど、間口が広くなりそうです。文系だからと諦めていた人にもチャンスがあるかもしれません。そこにはどのような狙いがあるのでしょうか。内山さんは次のように説明します。
「これまで宇宙飛行士の活動の場は、主に国際宇宙ステーション(ISS)でした。宇宙船を操縦してISSへ行き、科学実験や観測、補修をするのが仕事です。しかし、今回の募集は有人月面探査を進めるNASAの『アルテミス計画』への参加を見据えての募集となります。活動の場や仕事の内容も変わってくるでしょう。過去に経験のない環境下での任務に携わることになるかもしれません。
そのようなとき、チームに必要となるのが多様性です。皆さんの職場でも同様かと思いますが、さまざまなバックグラウンドの人がチームにいると、ものの見方も多様になります。するとチームが強化されますね。それは宇宙という職場でも同じです。経験のないミッションに挑むからこそ、メンバーの多様性を強化したい。それが、今回、募集方法を変えようとしている狙いです」