“乾杯漫才”で知られる、お笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世さんは、9歳と2歳の2人の娘を育てるパパでもあります。前編 に引き続き、子育て経験や、子育てでありがちな困ったことにどう対応するかについて聞きました。自身の中学受験経験についても語ってもらいました。

偏屈で熱心だった僕の両親

 子どもの頃は勉強も運動も得意で、自分で言うのもなんですが、「神童」っぽい空気を漂わせていました(笑)。中学受験を突破して、地元の公立ではなくちょっと離れた名門私立中学に通っていたのですが、14歳から不登校になり、そのまま6年間引きこもり。その経験を元に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)を執筆したのですが、両親のことは嫌な感じで書いてて。「テレビを家に置かない」とか、「クラシックを聴け、漫画を読むな」とか、実際、押し付けの強い父母でしたので、「僕は子どもにはこうしないでおこう」と反面教師のように描いている。

 ただ、偏屈である一方で、子どもと過ごすことに非常に積極的な親だったなと。父はよくキャッチボールをしてくれました。なぜか僕がいつもキャッチャー役。父が投げる球を「いい音を鳴らす」ことを意識して受けさせられていました(笑)。

 最も印象深いのは、「引き算の筆算は、上の位からやれ」という教えです。学校では大抵、1の位から順番に計算する方法を教えられますが、父は「1番上の位から計算したほうがミスが少ない」と。だからいまだに僕は上からやっていますが、同じやり方をする人に出会ったことはありません。そんなマイナーな方法をちゅうちょなく子どもに教えた父は、ある意味「ブレない親」だったのかもしれない。僕はそこまで確固たる子育ての方針を持っていませんし、どちらかといえば「自分の嫌な部分が子どもにうつらないように、なるべく離れていたい」とビクビクしている。見習うべきところもあるのかなぁと。

 ちなみに上の位から引き算の筆算をする方法を「こんな方法もあるんよ」と長女に教えてみたところ、「学校ではそんなの習ってない!」とかたくなに拒否されて。秘伝は僕の代で途絶えることになりました(笑)。

髭男爵の山田ルイ53世さん
髭男爵の山田ルイ53世さん