“乾杯漫才”で知られる、お笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世さん。2人の娘を育てるパパでもあります。最新エッセー集『パパが貴族』(双葉社)では、自らの正体が“一発屋芸人”と呼ばれる髭男爵であることを子どもたちに隠している子育ての様子を描いています。そんな山田ルイ53世さんに、自身の子育て経験や、子育てでありがちな困ったことにどう対応するか、について聞きました。前後編でお届けします。

「子育てはしんどい」が本音

 お笑いコンビ髭男爵の山田ルイ53世です。妻と、今年9歳になった長女と2歳の次女、2人の女の子を育てています。

 主に長女のことを書いたエッセー『パパが貴族』(双葉社)を出したこともあってか、「育メンですね」と言われることがありますが、世の中には僕よりしっかり子育てをやっているお父さんは山ほどいますし、そもそも自分の子どもの世話を焼いて威張るのもおかしい

 本音を言うと「しんどいな、やりたくないな」と思う瞬間も多々ある。100%「子育てを楽しんでます!」とは言えません。よく思うのは、子育ては非常につらい肉体労働だということ。赤ちゃんの世話は普段とは違う筋肉を使う感覚があって、長女が生まれたばかりの頃はオムツ替え1つにしても汗だくになるようなありさまでした。

 唯一子育てで心がけているのは、娘の言動にしっかりとリアクションすることくらい。「君に対して、周りの世界はちゃんと反応するんだよ」と肌感覚で染み込ませておきたいんです。長女が幼稚園に通っていた頃、「パパ、凍れ!」などと魔法使い気取りで言ってくることがよくあって。子どもというのはしつこい。同じギャグやボケを繰り返す手法は、お笑い用語で「天丼」と言うんですが、短い間に5回も6回もやる。お笑いならウケません。毎回反応するのは疲れますが、ほかに教育方針を持っているわけでもないので、最低限これだけはやっておこうかなと思っています。

 勿論これが「正解」などと言うつもりはない。今は「子どものためにこれをやるといい」とうたっている育児書が世の中にあふれていて、子育てのハードルが上がっている気がします。「正解」があると思うと、むしろ子育てがつらくなることもあるでしょう。育児書を一度全部無くしてみたらいいんじゃないかなと思っているくらいです。

髭男爵 山田ルイ53世さん
髭男爵 山田ルイ53世さん