気温が上がるこれからの季節は、ずっと屋外にいると疲れてしまいますね。そんな時にお薦めのお出かけ先の一つが美術館。子ども連れでもポイントを押さえれば、気軽な気持ちでアートを楽しむことができます。フランス在住のアーティストでジャーナリスト、2児のママの永末アコさんが、子どもを美術館に連れていく際に親が意識すべきことなどをリポートした上編に続き、下編のこちらの記事では、ポンピドゥー・センター国立近代美術館でのワークショップの概要や、子どもが自由な発想を持ち続けるために大切なことを紹介します。

(上編)わが子の美術館デビュー じっと絵を見るゲームとは?
(下編)「存在理由があればアートは自由」を幼児から教えるわけ ←今回はココ

親子参加のワークショップで感動を共有する

 皆さん、こんにちは。フランス在住の永末アコです。このコラムでは、アーティストでママでもある私の経験と関係者への取材から、アートの世界へ子どもを導く方法を提案します。


 今、世界の多くの美術館が、子どものためのコーナーや説明パネルを設置したり、ワークショップ (ラボやアトリエと言う場合も)を開いたりしています。それらの取り組みが美術館好きの子どもを増やしていることは間違いありません。

 パリのポンピドゥー・センター国立近代美術館のワークショップ はその先駆け。1977年のオープン以来、子ども向けギャラリーが併設され、近年ますます充実して話題になっています。

ワークショップの受け付けホールはまだ見ぬ未来への入り口のよう。壁も床も溶け合っているような空間。デザインを担当したマチュー・ルオナールは「ここは学校の世界からとても遠いところ。自由に描ける真っ白い大きな紙の上をイメージして、子どもたちが何でもできると感じられる空間にしました」と語る
ワークショップの受け付けホールはまだ見ぬ未来への入り口のよう。壁も床も溶け合っているような空間。デザインを担当したマチュー・ルオナールは「ここは学校の世界からとても遠いところ。自由に描ける真っ白い大きな紙の上をイメージして、子どもたちが何でもできると感じられる空間にしました」と語る

 この子どものワークショップは親との参加が原則です。その理由を同館の子どもギャラリー&子どもワークショップのプロジェクトチーフ、カテリーヌ・ボワロ(BOIREAU Catherine )氏は次のように説明します。

 「子どもだけで参加する場合、戻ってきた子どもに親は必ず『どうだった?』と聞きます。しかし体験したばかりの、まだ新鮮なほんわかとした『印象』を子どもは言語化できません。『楽しかった』と一言でまとめてしまいます。親はそれだけ?とがっかりするでしょう。

 しかし親子で参加すれば言葉ではなく感動を分かち合えます。すぐに会話にならなくても、感動を長い間共有し、日常の中で再び似たアートを発見し合ったり、何かの瞬間にそれについて語り合ったりすることができます」

 ポンピドゥー・センター国立近代美術館のワークショップは約3カ月ごとに内容が変わります。内容によりますが、約300平方メートルのスペースが、大体幼児向け、小学生向け、中学生・高校生向けの3つに分けられます。地下階には、中・高生向けの別のワークショップスペースもあります(ここだけ無料。同美術館は経済的に困難な家庭の子どもたちにも積極的にアプローチしているからです)。

 年齢が低い子向けの2つのスペースは簡素を極め、机も椅子もありません。壁は真っ白で、キャンバスのような空間です。「年齢が低い子ほど大きなものを作りたがるので、体を使って制作ができるようになっています。特に6~10歳の子のアートに対するエネルギーはすごい! 自由が感じられます」とボワロ氏。

自由に楽しく作られたのが分かるワークショップでの作品。目の前にすると元気をもらえる
自由に楽しく作られたのが分かるワークショップでの作品。目の前にすると元気をもらえる

 子どもは年齢が大きくなるにつれて細かい作業に興味を持ち始めます。ここには小学校高学年くらいから使えるラボ(実験室)もあり、ニューテクノロジーに触れて3D映像を作ることもできます。

 0歳から参加できる赤ちゃん向けのワークショップを行うこともあります。「それは初めて出合う絵本のようなものです。例えば空間を青で統一したブルーの世界で、『ブルーブルブルー』と音楽に合わせて歌ったり、話したりします。ここは親のための場所でもあります。アートを通して、生まれたての子どもとゆったりと触れ合うのです」とボワロ氏は楽しそうに語ります。

赤ちゃん参加OKのワークショップでは、赤ちゃんが泣いても大丈夫なのでママのストレスは少ない
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