「夫が飲み会に誘われた」職場の無理解、妻は悲鳴

 FJなどが昨年8月、妊産婦と夫らに対して実施した「コロナ禍の妊娠・出産」に関するインターネット調査(有効回答数558件)によると、里帰り出産の希望者はコロナ禍前は43%だったが、コロナ禍後は25%と減少した。高齢の親に対する配慮や、母子への感染に対する懸念、県をまたいだ移動制限などで、里帰りを控える人が増えたことがうかがえる。

 さらに病院や自治体、NPOなどの両親学級も、一時休止になったり人数が制限されたりして、受講できた人の割合が大きく減少した。実家も支援機関も頼れない中、母子の孤立を防ぐには、夫の育児分担が不可欠だ。

 しかし同じ調査の自由記述欄は「親に来てもらえず、両親学級もなく不安ばかりで毎日泣いていた」「激務の夫も積極的に育児をしてくれるが限界がある。(自分は)寝不足でボロボロ」といった母親の悲鳴であふれている。中には「夫は新生児がいると伝えているのに、歓迎会の主役として飲み会に誘われた」と、職場の無理解を嘆く声もあった。

改善しないテレワーク。古い企業風土に嫌気

 松田さんは今年初めに転職した。育休取得を巡る会社側の対応だけでなく、古い企業風土に限界を感じたのも一因だという。

 転職前の会社では、上司たちは「もう何日も子どもの顔を見ていない」と得意げに語り、「今日子どもの誕生日なんだよね」と言いつつ、だらだら残業している。コロナ禍で全社的にテレワークを始めたものの、社内システムがパンクして結局、社員は出社せざるを得なかった。受発注がいまだにファクスで行われるなど、業界にもリモート化を妨げる慣習が残っていた。

 さらに2度目の緊急事態宣言が出された時、これらの仕組みが全く改善されていないことに、松田さんは深く失望した。「業界も会社も横並び体質で、新しいことに取り組むのを嫌がる。この職場に留まっても、自分と家族が望む形で働き続けるのは難しいと思いました