好きなことに没頭する「夢中力」。そんな夢中力を発揮して、体を動かせない人などが遠隔で操作する「分身ロボット」OriHimeを開発した、ロボット開発者の吉藤オリィさん。「子どもの夢中力を伸ばす」をテーマに、花まる学習会代表の高濱正伸さんと特別対談しました。不登校時代を経て、今に至る吉藤さんが育てられた過程で親に感謝していることや、子どもが好きなことを見つけて没頭するためのヒントを、前後編に分けてお伝えします。

前編 高濱正伸×吉藤オリィ 子の「夢中力」つぶさない術 ←今回はココ
後編 親は「教えない」 リアクション上手であればいい

夢中力のきっかけになるのは

日経xwoman DUAL(以下、略) 本日は、吉藤さんが開発した、「分身ロボット」OriHimeが接客をするカフェ「分身ロボットカフェDAWN(ドーン)ver.β」(東京・日本橋)で対談をしています。ALS(筋萎縮性側索硬化症)などで外出困難な方が遠隔操作しているOriHimeなどが、サービススタッフとしてあちらで働いています。

高濱正伸さん(以下、高濱) 吉藤さんには、ずっと会いたいと思っていました。私には、歩くことも座ることも話すこともできない重度の障害のある現在22歳の子どもがいるのですが、最近、アートのプロジェクト「NOT≠EQUAL(ノットイコール)」をスタートしました。今日着ているTシャツも息子が描いた絵を使ったものです。

 ずっと税金を使う側でいた彼も、もしかしたら税金を払う側になれるかもしれない、という夢を見て、取り組み始めたばかりです。そんなタイミングで吉藤さんとお話しできて、とても光栄です。吉藤さんは今おいくつですか。

吉藤オリィ(以下、吉藤) 34歳です。

花まる学習会代表の高濱正伸さん
花まる学習会代表の高濱正伸さん

高濱 私が花まる学習会をつくったときが34歳でした。吉藤さんは、突き抜け方がかっこよくて、宝石みたいな存在ですよね。

吉藤 ありがとうございます。

―― 著書『ミライの武器 「夢中になれる」を見つける授業』(サンクチュアリ出版)にも、吉藤さんの圧倒的な「夢中力」の変遷が詳しく書かれていますが、OriHimeや分身ロボットカフェは、吉藤さんの「夢中力」の成果といえますよね。今回の対談テーマは「子どもの夢中力を伸ばす」ですが、吉藤さんは、小さな「違和感」を大切にしてきているとか。

オリィ研究所代表 吉藤オリィさん
オリィ研究所代表 吉藤オリィさん

吉藤 はい。私自身は昔から、「ここはもっとどうにかならないのかな」と考えたり、言ったりしたい、つまりクレーマーなタイプでした。言い続けるだけだと単に口やかましいクレーマーですが、技術を身に付けたおかげと、高校時代に「自分もできることがあるかもしれない」と勘違いをしたのがきっかけで、今にまでつながっています。