HSCの特徴について学校と情報共有を

 繊細で敏感な子にとっても、学校という環境は、とても重要です。まずはHSCの特徴について親御さんが理解し、できるだけ学校や担任の先生にそれを伝えてください。具体的には以下のようなポイントです。

・子どもがとても敏感な特性を持っており、他の子が感じないようなことでも刺激になってしまうこと
・学校に行けないときもあるが親として支えたいと思っていること
・もし怒るときには厳しく叱責せず、できるだけ優しく諭してあげてほしいこと

 HSCは心理的な概念で、医学に適応するには曖昧すぎるため、医学的概念ではないために知らない医師も多くいます。これは学校側も同じです。スクールカウンセラーにも知識がある人とない人がいますので、理解が得られにくいこともあります。それでも伝えておくことに意味はあります

 子どもの特性を学校側に理解してもらい、子ども自身が「ここは安心な場所だ」と思えれば、学校に行くことへのハードルが下がるかもしれません。

 どうしても学校に通うことが難しい場合は、適応指導教室やフリースクールへの転校、という選択肢も考えられます。学べる環境の選択肢を広げてあげることも大切です。

 順調に登校できないことについて、不安や焦りを感じる気持ちはよく分かります。親御さん自身がつらい気持ちのときには、HSP(非常に敏感で繊細な感覚や感受性をもった人)やHSCへの理解がある心理士や自助グループを探してみるのも手です。

 最後に、ウィズコロナという今の状況にかかわらず、HSCの子を育てる際に大切なポイントをお伝えします。

(1)嫌なことは嫌と言える安心な関係をつくり、本音を出させる
(2)感じ方、考え方、気持ちを尊重し、価値観や期待を押し付けない
(3)親の不安や恐れが伝わらないようにする、不機嫌の責任を負わせない
(4)子どもの人格を否定しない、性格を決めつけない
(5)条件をつけて愛さない。しかし過保護、過干渉にならないよう気を付ける
(6)他の子や兄弟姉妹と比較しないで、個性を尊重する
(7)敏感さのよいところやメリットを伝える
(8)叱る前にルールを作り、破ったときはまず理由を聞く
(9)マイナス感情もあっていいし、大切な感情だと伝える
(10)親とふたりだけの関係に依存させないで、いろいろな人と付き合う

 親から信頼され、安心できる環境で育つことができれば、HSCの子は本来持っている高い芸術性や創造性を生かし、生き生きと成長していくことができます。上記のようなことを心がけ、敏感さを封じるのではなく、生かす子育てをしてほしいです。

取材・文/藍原育子(きいろ舎) イメージカット/PIXTA


長沼睦雄
十勝むつみのクリニック院長
長沼睦雄 日本では数少ないHSP/HSCの臨床医。北海道立札幌療育センターにて小児精神科医として14年間勤務。2000年よりHSP/HSCに注目して研究。16年に十勝むつみのクリニック開業。神経発達症や発達性トラウマなどの診断治療に専念し、脳と心と体の統合医療を行っている。著書に『敏感すぎる自分を好きになれる本』(青春出版社)、『子どもの敏感さに困ったら読む本』(誠文堂新光社)など。