「頑張れ」ではなく「どっちを選んでもいいよ」

 学校に行けない、登校途中で引き返してしまう、といった子どもの姿を見ると、親としては心配が募ります。「学校の何が嫌なの?」「このまま学校に行かなかったらどうなると思ってるの?」などと、お子さんを責めたくなるかもしれません。

 また「自分の子育てのどこが悪かったのか」「先生や学校に迷惑をかけてしまう」「周りの保護者からなんて思われるか」と自分を責めてしまうこともあるでしょう。無理やりにでも登校させるか否かで、夫婦で意見が異なることもあるかもしれません。しかしお子さんが「学校に行きたくない」または「どうしても行くことができない」というときには、無理をさせないことです。

 そして過剰な「頑張れ」で追い詰めないようにしてください。HSCの子には「頑張れ」と言うのではなく、「どちらを選んでもいいよ」と声をかけるほうが、子ども自身に「やってみよう」という力が湧いてきます。自分自身から力が湧き出るまで、そばで見守ってあげてほしいのです。親がよかれと思ってやっていることでも、無理な登校を促すことで、将来にまで影響するような大きな心の傷ができてしまうこともあります。

「甘やかし」と「甘えさせる」ことの違いとは

 しかし親にとって、子どもに「学校に行っても行かなくてもいいよ」と伝えるのは、大変勇気がいることだと思います。「甘やかしていいのか?」と自分を責めたり、周りからあれこれ言われたりすることもあるでしょう。しかし「甘やかし」と「甘えさせる」ことは違います。

 甘やかしとは物質的に満たすこと、そしてできる部分までも親が手や口を出してしまうことです。たとえば子どもの望むままになんでも買い与えたり、本当は自分でできること(着替えや宿題、学校への提出物など)を親が代わりにやってあげたりすることが、甘やかしです。

 これに対して「甘えさせる」のは、子どもの気持ちを手助けすることです。HSCの子はワガママや親を困らせたいという気持ちから、学校に行けないと言っているのではありません。むしろ自分の気持ちを表現するのが苦手で、同時に「親を困らせたくない」という気持ちも強く持っています。その子たちがギリギリのSOSとして「学校に行けない」と訴えているのです。

 では具体的に、どうしたらいいか。まずはこの3つの点を心がけてください。

<子どもと自分を褒めるポイント>

(1) 「できている」を褒める(「できない」に目をつむる)
(2) 要求水準を下げる(できなくてあたりまえと思う)
(3) 以前(昨日)と比較する(人と比べない)

 これは子どもに対してだけでなく、親自身に対しても大切なことです。

 大切なのは、存在を肯定してあげることです。「学校に行っても行かなくてもママは(パパは)いつも〇〇ちゃんが好きだからね」と声をかけてあげてください。

 スキンシップが効果的な場合もあります。背中に手を回してさすってあげたり、腕に力を入れてギュッと抱きしめてあげたりすると、子どもは「自分はここにいていいんだ」という気持ちになります。「ここは安心できる場所だよ」「あなたを大切に思っているよ」という気持ちを体で表すのです。