友達はいる、いじめもない、目立ったトラブルもないのにどうしても学校に行けない、行きたくない。休校明け、子どもにそんな様子が見られたことはないでしょうか。敏感な子どもたち(HSC)の特徴やコロナ禍での心のケアについて紹介した前編に続き、後編の今回も、十勝むつみのクリニック院長の長沼睦雄さんに解説してもらいました。

楽しいことでも刺激になってしまうことが

 新型コロナウイルスによる休校は、ウイルスへの恐怖はあったものの、登校不安のあるHSCの子たちにとっては、自宅で過ごせるという点で安心感を得られている時期でもありました。しかし休校が明け、他の子どもたちが通常のペースを取り戻しつつある今は、登校不安を抱えるHSCの子やその親御さんにとって心が落ち着かない時期です。

 HSCの子にとって、大勢の人が集まる空間にいることは、それだけで大きなストレスです。刺激を強く感じやすいのでクラスメートの大声や騒がしい集会だけでなく、例年なら行われているはずの遠足や運動会、学芸会といったイベントも大きな負担になります。楽しい、楽しみたいという気持ちはあったとしても普段とは違う陽気な雰囲気やみんなのテンションについていけず、心に負担がかかってしまうのです。このようなことから、学校は過ごしやすい場所とはいえません。

 なかでもHSCの子は自分が怒られるのはもちろん、他の子どもが怒られているのを見たり聞いたりすることにも苦痛を感じます

・友達が先生から怒られているのを見ると、泣いたりパニックを起こしたりする
・同じクラスの生徒が忘れ物をして注意されるのを見ると、自分も忘れ物をするのでは? と極度に不安になる

 こうしたことは、叱られた友達の気持ちを感じ取る力や、共感力や同調性が人よりも高いために起こります。HSCの子の場合、自分が体験したわけでもないのに、相手の気持ちが自分の中に入ってきてしまうことがあります。これは「過剰同調性」といいます。

 本来自分と他者との間には「境界線」と呼ばれる精神的な境目があって、多くの人は自他を区別し、自分を守ることができます。しかしこの境界線が曖昧だと相手の感情が自分の中になだれ込んできてしまうため、「あんなに怒られてかわいそう」「きっとつらいだろう」と、怒られている子どもの気持ちを思い、共感してつらい気持ちになってしまうのです。

 敏感な子どもがみんな不登校になっているわけではありません。しかしこのような理由からHSCの子は登校へのハードルが、他の子に比べてもともと高いといえます。