ささいなことをいつまでも気にする、においや味の変化にすぐ気がつく、家族や友人の考えていることをすぐに察するなど、「うちの子、ちょっと敏感すぎるのでは?」と感じることはありませんか。そうした子は、今回のコロナ禍で人一倍困難を感じているかもしれません。コロナ禍における、敏感な子どもの心のケアについて、敏感気質の子どもや生きづらさを抱えた多くの人を診察している、十勝むつみのクリニック院長の長沼睦雄さんに2回にわたって解説してもらいました。

 学校が再開したのに行きたがらない、教室に入れない、新型コロナウイルスへの感染をとても怖がる……。子どもにこうした様子が見られることはありませんか。それは本人の「気持ちの弱さ」ではなく、生まれ持った特性のためかもしれません

 生まれつき非常に敏感で繊細な感覚や感受性を持った人のことをHSP(Highly Sensitive Person ハイリー・センシティブ・パーソン)と言います。米国の心理学者、エレイン・N・アーロン博士が発表した概念で、1996年に米国で出版された『The Highly Sensitive Person』はベストセラーとなり、世界各国で翻訳・出版されました。

 このようなHSPの特性を持った子どもたちのことをHSC(Highly Sensitive Child)と呼びます。北海道帯広市にある私のクリニックには、子どもの繊細さや敏感さに悩む親御さんが、全国から訪れます。

 HSCには以下のような特徴があります。お子さんが下の項目に当てはまるか、または過去にあてはまっていたかをチェックしてみてください。

1.すぐにびっくりする
2.服の布地やラベルが肌に当たるのを嫌がる
3.驚かされることが嫌いだ
4.怒るよりも優しく注意したほうが効き目がある
5.親が何を考えているかがすぐに分かる
6.同年齢の子よりも難しい言葉をよく使う
7.いつもと違うにおいに気づく
8.ユーモアのセンスがある
9.直感力に優れている
10.興奮するとなかなか寝付けない
11.引っ越しや入学など大きな変化にうまく対応できない
12.たくさんのことを質問する
13.服がぬれたり、足に砂がついたりすることを嫌がる
14.完璧主義だ
15.他人のつらい気持ちにすぐに気が付く
16.静かに遊ぶことが好き
17.考えさせられる深い質問をしてくる
18.痛みに敏感だ
19.うるさい場所を嫌がる
20.他人の外見の変化や物の移動など、細かいことによく気が付く
21.石橋をたたいて渡る性格だ
22.知らない人の前で発表することが得意でない
23.物事を深くよく考える

 上記のうち、当てはまる項目が13個以上あれば、お子さんはとても敏感で繊細な感覚を持っており、HSCである可能性は高いでしょう。しかしたとえ「はい」の数が少なくても、その度合いが極端に高ければ(例えばうるさい場所が苦手で外出を極端に嫌がるなど)、HSCの可能性があります。

 HSCは心理的概念ですが、こうした名称を付けることには、「新たなレッテル貼りだ」「枠にはめて決めつけることはしたくない」という意見もあります。しかし、HSCという名前は、枠にはめて決めつけるために提唱されているものではありません

 抱えている悩みに名前が付くことで、敏感で感受性が高い子の反応を否定する必要がないことや、受け止め方が分かることもあります。お子さんや親御さんご自身、あるいは、大切な人の生まれ持ったありのままを知ることができ、適切な関わり方ができるようになる大切な用語だと考えてみてください。