低学年から「ヘルスリテラシー」について知ろう

 田中さんによれば、ストレスを抱えた低学年の子には、以下のような症状が見られることがあると言います。

●体の症状
食欲が落ちた
頭が痛い
おなかが痛い
眠れない

●行動面の症状
落ち着きがない
しがみついて離れない
よく泣く
わがままになる
言動が幼くなる

 「これらは、自分を守るための心の防衛本能が働いているために見られる症状。幼児から小学校低学年くらいまでのお子さんには、『自己中心性』と呼ばれる、自分の立場で物事を見るという認知の特徴があります。例えば幼い子ほど、親や周りの反応を気にすることなく自分の知っていることをべらべらと話してくれますね。これも自己中心性の表れです。

 そのため幼児から低学年くらいのお子さんは、新型コロナウイルスに関するすべてのことを『自分に関係するもの』と捉える傾向があります。自己中心性が強く、不安にかられるお子さんの場合、『お父さんもお母さんも自分も感染する』『自分の学校でも感染者が出るに違いない』など、見聞きした情報をすべて自分と関わりがあることだと感じてしまうことがあります。その場合は、大人に比べて不安や恐怖を大きく感じやすいのです」

何でも自分の立場から物事を見るという特徴が低学年にはある。画像はイメージ
何でも自分の立場から物事を見るという特徴が低学年にはある。画像はイメージ

 しかしだからといって、「心配させないために新型コロナウイルスについて家庭内で口にしない」のはおすすめできないとのこと。

 「健康でいるためには、自ら必要な情報を調べて理解し、それを利用するという『ヘルスリテラシー』が欠かせません。ヘルスリテラシーとは、健康に関する情報を自ら入手して理解し、メリットやデメリットを評価して適切な健康を手に入れるという能力のこと。ヘルスリテラシーがないと誤った情報に踊らされて、知らず知らずのうちにデマや偏見に左右されかねません。ヘルスリテラシーを持つことは子どもにとっても尊重されるべき権利です。子どもが情報から取り残されることなく、正しく理解し、考えられるよう親御さんのサポートが必要です」

低学年に新型コロナウイルスの情報を伝えるときのポイント

・厚生労働省など、公的なサイトなどから正しく情報を得て、正直に伝える(リンクは記事末尾で紹介)
・その子の年齢に合った言葉で話す
・複数のことを一度に話さずに、一回にひとつのテーマに絞る

 「しかし、お子さんの不安を和らげたいと思っても、『絶対に大丈夫』『あなたは感染しない』と伝えることはおすすめできません。たとえ自分で100%と思える感染対策をしていても、有効なワクチンがない現在は、誰でも感染する可能性があるからです。自分の子どもに伝えるべき情報やその表現方法について、親御さん自身でよく検討してから子どもに伝えるようにしましょう」